孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

コンゴ  武装勢力等による殺戮、新型コロナ、さらにエボラ出血熱も 

2020-06-06 23:37:45 | アフリカ

(コンゴ民主共和国マシシで起きた武装集団間の衝突を逃れた人たちを収容するカリンダ国内避難民キャンプで小屋の前に立つ子どもたちとその母親(2020年1月15日撮影【6月6日 AFP】)

【西アフリカ 相次ぐ武装勢力による殺戮】
世の中は新型コロナで大騒ぎですが、禍・不幸の種は浜の真砂のように尽きることもなく、紛争や難民の問題は各地で継続しています。

アフリカ、特に西アフリカおよびコンゴでは武装勢力や民族対立などで大量殺戮が頻発しています。

****ナイジェリアで武装集団が住民74人殺害 負傷者も多数 AFP通信など伝える****
ナイジェリア北西部ソコト州で27日、地元の武装集団が五つの村を相次いで襲い、住民ら74人を殺害した。AFP通信などが伝えた。事件を受け、ブハリ大統領は軍に実行グループの徹底取り締まりを指示した。
 
地元紙「デーリートラスト」が伝えた住民の話によると、集団はバイクに分乗して村を襲撃。銃で住民を次々と殺害し、負傷者も多数に上った。集団は何も奪わずに去ったという。

犯行の動機や集団の実態は明らかになっていないが、現地では25日にも別の複数の村が同様に襲われ、18人が死亡していた。【5月29日 毎日】
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****ブルキナファソで過激派の襲撃相次ぐ、50人死亡****
西アフリカの内陸国ブルキナファソで週末にかけ、イスラム過激派によるとみられる襲撃事件が相次ぎ、合わせて少なくとも50人が死亡した。政府が5月31日に発表した。
 
北部ロルム県で29日、自警団に警備されて移動中の商店主らの車列が銃撃を受け、15人が死亡。翌30日には、東部コンピエンガ県パマ近郊の家畜市場が襲われ、少なくとも25人の死亡が確認された。
 
北部の町バルサロゴでも同日、人道支援団体の車列が待ち伏せ攻撃に遭い、民間人少なくとも5人と憲兵5人が死亡、約20人が負傷した。襲撃を受けた人道支援団体は、北方の町に食料を届けた帰りだったという。
 
旧フランス植民地で最貧国の一つであるブルキナファソでは2015年以降、イスラム過激派の活動が活発化。特に東部と北部で襲撃が多発し、5年間で900人以上が死亡、約86万人が家を追われて避難生活を送っている。
 
こうした中、牧畜民の少数民族フラニ人が過激派を支援しているとの非難が他の民族から上がり、フラニ人を標的とした襲撃事件も相次いでいる。
 
過激派の襲撃は昨年から激化しており、ほぼ毎日のように発生。外国人の拉致事件も相次いでいる。 【6月1日 AFP】
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上記ブルキナファソやニジェール、マリなど西アフリカでは、国際社会の関心が新型コロナに集中していることもあって、国際テロ組織アルカイダとイスラム過激派組織「イスラム国」の系列組織が抗争を繰り広げる状況にもなっています。

“系列組織”と言っても、思想的にアルカイダあるいはISに共鳴して云々というのではなく、単にヤクザが抗争の都合上「代紋をかつぐ」ようなものでしょう。

****アルカイダとIS系組織、サヘル地域で抗争繰り広げる****
アフリカ・サハラ砂漠の南縁に位置するサヘル地域一帯では、専門家によると国際テロ組織アルカイダとイスラム過激派組織「イスラム国」の系列組織が銃を向け合っているといい、数年保たれた両組織による協力の時代を崩壊させている。
 
両者はこれまで、シリアのような他の戦地では対決姿勢を取るものの、サヘル地域ではしばしは提携し、攻撃における連携や、戦闘員の交換すらも行っていた。
 
同地域では数年の間、イスラム過激派との戦闘が続いている。こうした過激派は2012年、マリ北部で最初に姿を現し、その後同国中部や隣国のブルキナファソやニジェールに進出。これまでに多くの兵士や市民が犠牲となり、さらに多数の人々が自宅からの避難を余儀なくされた。
 
しかし今年の初め以降、マリ中部やブルキナファソで散発していたアルカイダとIS系列の組織による衝突が、本格的な戦闘へと拡大したとみられている。
 
こうしたイスラム過激派内での内紛に関する情報はほとんどなく、その多くは強盗団や民兵組織、国軍との相次ぐ衝突によって、すでに情勢が不安定な地域で発生している。
 
専門家や地元当局者は、アルカイダとISによる戦闘の背景に、支配地域の拡大や飼料用農作物の入手をめぐる対立が理由の一部として存在したと話す。
 
国連マリ多次元統合安定化派遣団のマハマ・サレー・アンナディフ団長は、過激派同士の抗争は「もはや内密のものではない」と指摘。「行き着く先がどこになるのか分からない。どちらも相手より優位に立ちたがっている」と述べ、両組織が土地をめぐって争っていると説明した。
 
マリの首都バマコに駐在する欧米の外交官によると、(中略)ある人がある組織、またはもう一方の組織に参加する理由には、周縁へと追いやられた民族集団に所属していたり、仕事がなかったりといった、地元事情に関連するものが多いと説明する。
 
バマコにある安全保障研究所の研究者、イブラヒム・マイガ氏は、争いも同様に局所的な理由で起きることが多いと指摘。「こうした争いについては、イデオロギーの角度からのみで理解すべきではない」と話す。
 
例えば年初の乾季には、ニジェール川デルタで栽培されたブルグと呼ばれる飼料作物をめぐり、マリ中部ではよく戦闘が勃発する。
 
匿名を条件に取材に応じた、マリ中部モプティの安全保障専門家はAFPに対し、イスラム過激派は「他の皆と同じように」ブルグが育つ地域をめぐって戦闘を繰り広げていると述べた。 【5月19日 AFP】AFPBB News
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【コンゴ 資源の呪い 軍・警察の暴力も】
そして、コンゴ。
こちらは豊かな鉱物資源が争いを惹起するという「資源の呪い」の側面も。
また、武装勢力を鎮圧する立場にある国軍も、その残虐性において武装勢力と同様に住民から恐れられています。

****コンゴ、8か月で民間人約1300人死亡 50万人超避難****
コンゴ民主共和国で、紛争や暴力により昨年10月以降の8か月で約1300人の民間人が死亡し、50万人以上が避難した。国連が5日、明らかにした。
 
国連のミチェル・バチェレ人権高等弁務官は、一部の攻撃が「人道に対する罪や戦争犯罪に当たる可能性がある」と警告した。
 
国連人権高等弁務官事務所は、イトゥリ州、北キブ州、南キブ州での衝突の拡大で「一般市民に壊滅的な影響が及び」、同国東部での死者がここ数週間で急増したと発表した。
 
OHCHRによると、武装集団が虐殺や残虐行為をする一方、政府軍も大規模な違反行為に及んでいる。同地域での武装集団による暴力は、性暴力や斬首、遺体の切断など「激しさを増している」という。
 
イトゥリ州では昨年10月から今年5月末までに、少なくとも531人の民間人が死亡された。うち375人は、3月以降の犠牲者だという。同国の軍や警察もこの期間に同州で民間人17人を殺害したとみられているという。
 
北キブ州では昨年11月に軍が作戦を開始し、主要武装勢力である「民主勢力同盟」の報復攻撃で少なくとも514人の民間人が死亡した。南キブ州では、民族対立による暴力が再燃しここ数か月で少なくとも74人の民間人が死亡し、女性と子ども数十人がレイプされた。治安部隊も民間人数十人の死に関与したという。
 
OHCHRのマルタ・ウルタド報道官はAFPに対し、昨年9月から暴力行為が急増したことを受け、北キブ州で40万人以上の民間人が家を追われたと述べた。南キブ州では今年1月以降に11万人を超える人が避難した。その大半が女性と子どもで、避難者は3月以降に急増したという。 【6月6日 AFP】AFPBB News
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****コンゴで市民1300人殺害 鉱物資源巡る紛争激化、8カ月で****
(中略)コンゴでは軍や警察が武装勢力メンバーと見なした住民を拷問し殺害するなど、規律の低さが深刻になっている。OHCHRは「人道に対する罪や戦争犯罪に当たる可能性がある」として軍や警察などを非難した。
 
イトゥリ州では鉱山の支配権を巡り、農耕生活主体のレンドゥ人の武装勢力が、牧畜に従事するヘマ人らを殺害した。【6月6日 共同】
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資源を巡る争いはアフリカ周辺国を巻き込み、1998年8月から2003年7月にかけての第2次コンゴ戦争は死者600万人とも推定され、アフリカ大戦(Great War of Africa)とも呼ばれています。

「大戦」は終結したものの、今に至るも、その余波が続いている状況です。

【新型コロナのパンデミックに加え、エボラ出血熱の再燃も】
そのコンゴは、他の国々同様、新型コロナのパンデミックにも襲われていますが、貧弱な医療資源、さらに上記のような状態では、その感染状況を十分に把握することもできません。

****【コンゴ民主共和国】感染拡大が続けば貧困層にさらなる試練*****
(中略)最初の新型コロナウイルスの感染者は3月10日に首都キンシャサで確認されました。フランスから帰国した52歳のコンゴ人でした。

この時点では「新型コロナウイルスは寒い国でのみ起きる」とか「白人のみに感染する」という考え方が国民に広がっていたこともあり、新型コロナウイルスの危険性が伝わりませんでした。そのためキンシャサでは人々が木の根や葉っぱを煎じたものなどの伝統的な民間療法によって予防ができると信じていました。
 
それでも政府がWHO などの機関と連携してラジオやテレビなどのメディアや地域の保健員による啓発活動を進めた結果、新型コロナウイルスの危険性や感染予防の重要性が伝わり、人々が政府に協力するようになりました。

検査は、コンゴ全土で1日120 人程度だったものが、世界保健機関の支援で500 人まで拡大しています。

検査キットと検査機関の不足のために、キンシャサ以外では検査ができないことが大きな課題です。

感染者は現在までにキンシャサのほか7州に広がっています。南キブの新型コロナウイルス対策チームのトップは、性暴力の被害女性への支援活動で、2018年にノーベル平和賞を受賞したムクウェゲ医師です。

ロックダウン対策は貧困者には困難
キンシャサでは感染拡大を防ぐために、ロックダウンが続けられていますが、人々の多くは生活に余裕はなく、食料、水、その他の生活必需品を得るために外出の自粛ができません。貧困者への抜本的な生活支援がない限りロックダウンによる感染予防効果は薄いと思われます。(後略)【5月26日 Hunger Zero】
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更に、コンゴはエボラ出血熱が起きた地域でもありますが、新型コロナに加えて、このエボラも再燃した模様です。

****コンゴでエボラの新たな流行発生 コロナ感染拡大の最中****
コンゴ民主共和国の保健省は1日、エボラ出血熱の新たな流行が、同国北西部で発生したと発表した。同国では東部でエボラ流行が発生しており、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(大規模な流行)も起きている。
 
エテニ・ロンゴンド保健相は記者会見で、「すでに4人が死亡した」と発表。さらに、国立生物医学研究所により、同国北西部の都市ムバンダカで採取された検体が陽性反応を示したことが確認されたと述べた。
 
同国では東部でエボラの感染が拡大し、2018年8月以降2280人が亡くなっているが、今月25日に終息宣言が見込まれていた。 【6月1日 AFP】AFPBB News
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【新型コロナへの偏りで増す他の疾病の危険】
踏んだり蹴ったりの状況ですが、疾病の脅威は新型コロナやエボラだけではありません。
新型コロナに資源・関心が集中すれば、他の疾病対策が手薄になるという問題も。

下記は南スーダンに関する記事ですが、事情はコンゴも同様でしょう。

****コロナ以外の感染症まん延も 南スーダンで国境なき医師団****
南スーダンで国際医療援助団体「国境なき医師団」(MSF)の新型コロナウイルス対策現場責任者を務めるジャンニコラス・ダンゲルサー氏が6日までに共同通信の電話取材に応じた。

内戦で多くの病院が破壊され医療体制は脆弱で、新型コロナの対応に医療資源が偏るとマラリアや下痢などがまん延する恐れがあると指摘、対策を徹底させる難しさを語った。
 
同国では1300人以上が新型コロナに感染、約10人が死亡した。ただ検査施設は国内に1カ所しかない。ダンゲルサー氏は「実際の感染者はもっと多く、まだピークに達していない。増え続ければ医療崩壊まで時間はかからない」と警告した。【6月6日 共同】
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もっとも、新型コロナへの集中で、他の疾患対策がおろそかになりがちなのは、コンゴ・スーダンのような国だけではなく、日本を含めた世界各国共通の問題でもあるでしょう。

コロナが怖いと引きこもるなかで、受診・医療もおろそかになり、他の疾患での死亡者が増加・・・
日本でも医療機関受診者が大幅に減少しています。長期的には、このことにより他の疾患の死亡者が増加するでしょう。

****非感染症への対応不十分に 新型コロナで世界各国****
世界保健機関(WHO)は1日、新型コロナウイルス感染症への対応に各国当局や医療機関が追われる中、高血圧や糖尿病などの非感染症の治療や予防措置が不十分になっている傾向があるとの調査結果を公表した。
 
WHOは5月に3週間にわたり、155カ国での現状を調査。治療などが一部もしくは完全に中断されるなどの影響を受けた国は、高血圧で53%、糖尿病で49%、がんで42%に上った。63%の国ではリハビリへの影響も出ており、半数以上の国では乳がん検診なども影響を受けている。【6月2日 共同】
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****コロナ拡大、感染症連鎖も 予防接種中断で1億人影響****
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う医療現場の逼迫で、他の感染症を防ぐ予防接種の取り組みが各国で中止に追い込まれている。

世界保健機関(WHO)などは、世界で1億1700万人超の子供がはしかの予防接種を受けられない可能性があると予測。接種中断で致死率が高いポリオ(小児まひ)や、結核の流行も再燃する懸念があり、医療保険システムに「壊滅的な影響」をもたらすと警戒を呼び掛けた。
 
感染抑止へ人と人との接触制限が要請される中、必要な医療インフラや人員が新型コロナ対応に割かれ、他の感染症の予防や治療が後回しになっているのが実情で、感染症流行の連鎖を引き起こす恐れがある。【5月5日 共同】
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冒頭に書いたように、禍・不幸の種は浜の真砂のように尽きることもありませんので、コロナ・コロナと大騒ぎするのではなく、バランスのとれた対応が必要です。

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