(【2016年02月29日 BLOGOS】2016年2月に、デンマーク・コペンハーゲンにオープンした、賞味期限切れの食品を専門に扱うスーパーマーケット「WeFood」 ホームレスを支援する団体が運営しています)
【関心が高まる食品ロス削減】
「世界は増大する人口に対応する食糧を確保できるのか?」という問題については、8月8日ブログ“食糧供給 人口増大、温暖化の影響に世界はどう対応するのか?”でも取り上げました。
食糧供給の増大、多様化とともに重要なのは、「無駄にしない」という発想の徹底でしょう。
膨大な食品廃棄物の問題は世界共通の課題です。
日本について個人的な経験を言えば、もう十年以上前でしょうか、深夜街を歩いているとドーナツの全国的チェーン店に灯りがついていて、店内では大きなゴミ袋に余った商品をザザーッと流し込む閉店作業が行われていました。
もちろん店側にはいろんな理由があってのことですが、「これはアカンやろ・・・」と、基本的なところが間違っているような印象を強く感じました。
****食品ロス削減へ官民一体の取り組み加速 賞味期限、1/3ルールにもメス****
超党派の議員連盟による「食品ロスの削減の推進に関する法律案(食品ロス削減推進法案)」が今国会で成立する見通しとなっている。
年間約646万t(平成27年度推計)とされる国内の食品ロスの削減に向け国民運動として展開する狙い。
こうした動きに呼応するように、農水省は賞味期限年月表示への取り組み拡大に向けた動きを見せる一方、小売大手のヤオコーは4月から、専用センターでのドライグロサリー(コメをのぞく)の入荷許容期限の緩和を明らかにするなど、食品ロス削減に向けた官民の取り組みが加速してきた。
「食品ロス」とは“本来食べられるのに捨てられる食品”。646万tの内訳は、事業系廃棄物由来(規格外品、返品、売れ残り、食べ残し等)が約357万t、家庭系廃棄物由来(食べ残し、直接廃棄等)約289万t。646万tという数字は、日々10tトラック1千770台分の食糧を廃棄している計算だ。
「食品ロス削減推進法案」では、政府、事業者、消費者ごとに取り組むべき役割を整理した。まず政府が食品削減の基本方針を策定。
同方針を踏まえ、都道府県や市町村が削減推進計画を策定し、対策を実施するとともに、消費者や事業者に対する普及啓発を行うほか、食品ロス削減に貢献した事業者等の表彰、フードバンク活動の支援。
事業者に対しては、商慣習の見直しなど、製配販三層で生じる食品ロス削減のための事業の取り組みを支援するとともに、政府や自治体に協力し、食品ロス削減に積極的に取り組むことを求めた。
また、食品ロスの約半分が家庭から排出されていることから、消費者には食品の購入や調理方法の改善などによる自主的な食品ロス削減への取り組みを呼びかけていく。
商慣習については、小売店などが設定するメーカーからの納品期限と店頭での販売期限が製造日から賞味期限までの期間を3等分して設定する“3分の1ルール”の見直しに加え、賞味期限の年月表示化や賞味期限延長も併せて推進していく。(中略)
小売による“3分の1ルール”の見直しは、東日本大震災(2011年3月)直後、一時的に緩和されたが、現在はほとんどが元に戻っている。
背景には消費者の過度の鮮度志向や、賞味期限そのものに対する理解不足があるものと見られるため、賞味期限の理解促進に向けた啓発活動も課題となりそうだ。【3月27日 食品新聞】
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3分の1ルールとは、製造日から賞味期限までの合計日数の3分の1を経過した日程までを納品可能な日とし、3分の2を経過した日程までを販売可能な日(販売期限)とする商慣習的なルールで、近年はこのルールが「期限に合理的根拠はなく、食品や資源のムダにつながる」という理由から見直しが検討されています。
****米国の食品廃棄物、1日に約15万トン 研究****
米国では1日に15万トン近くの食品廃棄物が発生しているとの調査結果が(4月)18日、発表された。国民1人当たり約422グラムの食品を毎日廃棄している計算になる。廃棄される量が最も多いのは青果物だった。
米科学誌「プロスワン」に掲載された研究論文によると、最終的に廃棄される食用植物を栽培するために毎年使用される土地の総面積は約12万平方キロで、これは米国内の農作物栽培好適地の約7%に及ぶという。また、無駄に費やされているかんがい用水は16兆リットルに上るとされた。
青果物は構成比で食品廃棄物全体の39%を占めており、次いで乳製品17%、肉類14%、穀類12%となっている。一方、廃棄処分されることが少ないのは、塩気の強いスナック菓子、食卓油、卵料理、砂糖菓子、清涼飲料水などだ。
2007年〜2014年の食品廃棄物に関する政府の調査データに基づく今回の研究では、廃棄される食品の総量が全米国人の1日の平均カロリー摂取量の約30%に相当することが明らかになった。
こうした結果を受け、論文は環境と農業従事者にかかる負担は「重大だ」と指摘しており、また食品廃棄物が「年間約35万トンの農薬と約82万トンの窒素肥料を用いて生産される収穫物に相当する」ことも記された。
解決策としては、果物や野菜のより適切な下ごしらえと保存の方法について消費者を教育する、食品の賞味期限を見直す、訳ありの生鮮食品を購入するよう消費者に勧める、食品廃棄物を抑制する取り組みを政府の持続可能性計画に組み入れるなどが考えられる。
論文の主執筆者で、米農務省農業研究局のザック・コンラッド氏は「食品廃棄物の問題は、さまざまなレベルで表面化している」と話す。
「増加を続ける世界人口の要求を満たす持続可能な方法を模索する上で、これらを総体的に検討することがますます重要になる」 【4月19日 AFP】
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【フランス 法律で「賞味期限切れ食品」の廃棄を禁止 貧困対策団体へ寄付】
事情はフランスでも同様ですが、2016年から大手スーパーに対して「賞味期限切れ食品」の廃棄を禁止する法律が施行されています。
****フランスで「食品廃棄禁止法」が成立、日本でも導入すべき意外な理由 ****
フランスで2016年2月初めに「賞味期限切れ食品」の廃棄を禁止する法律が成立したのをご存じだろうか。類を見ない画期的な施策であると世界各地のメディアで取り上げられ話題になっている。(中略)
そもそもこの法律は、貧困対策やチャリティーなどを支持する人権派の議員らが中心となって活動し、成立にこぎつけた。
フランスのスーパーマーケットは、賞味期限切れ、または賞味期限に近づいている食品を廃棄すること(「食品ロス」と呼ばれる)はできなくなり、その代わりに、普通なら廃棄する食品をボランティア組織やチャリティー団体に寄付することが求められる。現物の寄付を受け取った団体は、貧しい人々のために食品を分配することになる。
比較的多くの廃棄食品が出る大規模店(法律によると400平方メートル以上の店)は必ず、貧困対策を行っているようなチャリティー団体と契約を結ぶ必要がある。さもないと罰則を受けることになり、最大で約8万4000ドル(約970万円)の罰金または最大2年の禁固刑を課される可能性がある。
「食品廃棄禁止法」の波紋
またスーパーマーケット側には、廃棄食品を「破壊」してはいけないという義務も課される。どういうことかというと、これまでスーパーマーケットは、賞味期限切れの食品を人々がゴミ箱から奪っていくのを防ぐために、廃棄処分の食品を意図的に化学薬品などで「破壊」して捨てていた。店側は、廃棄食品を拾って食べることで腐った食品を口にしてしまうこともあるとして食べられないように「破壊」していると主張していた。
だがそれは表向きの理由であり、現実には廃棄処分の食品を拾われたら商売あがったりだと考えた店側の対応策だと言われている。ゆえに、フランス政府は破壊を違法にし、再分配するよう規定した。
今フランスでは年間710万トンの食料が廃棄処分されている。その内訳は、67%が一般から、15%はレストランから、そして11%はスーパーマーケットなどから廃棄される。
チャリティー関係者らによれば、寄付される食料が15%増加すれば、年間1000万食を追加で提供できるという。スーパーマーケットからの寄付が増えればそれだけ提供できる食品も必然的に増える。
いいことづくめの話に見えるが、もちろん課題も多い。
この法律によれば、慈善団体などと契約を交わさないことで罰則が適応されるのは、大店(400平方メートル以上の店)のみであり、中小規模のスーパーマーケットにその義務はない。
というのも、個々の店による食品ロスが比較的少ないということもあるが、財政的にも体力の劣ることが多い中小規模の店にはこの法律は大きな負担となるからだ。例えば廃棄処分の食料を仕分けし、無償で提供するのにはさらなる時間と労力が必要になる。
この点についてフランスの商業流通連盟は、「この法律はターゲットも目的も間違っている。大手の店が出すのは廃棄食品全体のたった5%に過ぎない」と、今回の法律を痛烈に批判している。
さらに「大手のうち4500店以上は以前から援助団体と食料寄付の契約をしており、食料寄付者としてはすでに突出している」とも述べている。つまり大手を法律で縛るだけではあまり効果がないということらしい。
フランス国内では「必要ない」との意見も
また法律によれば、寄付される廃棄食品の仕分けをするのはスーパーマーケット側だ。腐ったものやつぶれた食品などを排除するのは店側の責任になり、食べられないゴミが寄付に紛れ込まないようになっている。
だが逆に、必要以上の食品が慈善団体などにどんどん流れて溢れ返り、「体のいいゴミ箱」に化す可能性も指摘されている。
さらには、廃棄処分にしない食品を誰が集めて、分配するのにいくらかかるのか、という問題もある。明らかにフランスのチャリティー団体などはさらなる人手が必要になるし、法律では、チャリティー側が食品を保管する冷蔵庫やスペースを確保する必要があるとしている。
フランスでも、これまで何も対策が行われていなかったわけではない。さまざまな食品関連業者から、困窮者に食料を配給する民間の組織やチャリティーに対して、これまでをまとめると10万トンの寄付が行なわれている。そのうち、3万5000トンがスーパーマーケットからの寄付食品である。(中略)
以上のように、フランス国内では「必要ない」との意見も出ているのである。
フランスの取り組みは参考になるのか
だが先に述べた通り、そもそもこの法律が可決された背景には貧困問題があり、貧困問題を解決するために食品ロスを活用しようとする試みだった。
フランスでは最近、無職の人々やホームレス、貧乏学生などがスーパーのゴミ箱から破棄された食品を漁って生活している実態が報じられたり、ゴミ箱を漁って窃盗罪で捕まった人のニュースもあった。ちなみにフランスでは、失業率が10.6%に達し、若者にいたっては26%にもなる。欧州加盟国の中でも失業率は高い部類に入る。
そんな状況を見かねたフランス・クールブボアの地方議員アラシュ・デアランバルシュ氏が、2015年1月に反貧困の草の根運動として、オンライン署名サイトで活動を開始。賞味期限切れ食品の廃棄禁止を訴えるキャンペーンを始めたのだ。そしてすぐに21万人以上の署名を得たことで勢いづき、デアランバルシュ氏は国会議員にも働きかけを行った。そして5月には下院が廃棄禁止の法案を一旦可決するに至った、という経緯がある。(後略)【2016年02月12日 山田敏弘氏 ITmedia】
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フランスでは、売れ残り品の廃棄禁止は食品以外にも拡大しています。
****フランス、売れ残り品の廃棄禁止へ****
フランスで、在庫や売れ残り品の廃棄を禁止する法案の準備が進められている。環境保護や循環経済の実現を目指したものだが、施行された場合はラグジュアリーブランドにも影響があると見られている。(中略)
仏政府は以前から循環経済への移行を掲げており、2018年にはエドゥアール・フィリップ仏首相が、再利用可能な製品に対して21年までにロゴをつけるなどのロードマップを発表している。ポワルソン仏環境連帯移行副大臣が主導する今回の法案準備は、そうした枠組みにも合致する。なお、これは今夏の議会提出が予定されているが、広く国民の意見を募るため、正式な期日は設定されていない。
フランスでは16年2月に食品廃棄禁止法が施行され、(中略)食品廃棄に関する意識が高まったが、それが衣料やその他の分野にも広がってきているのだという。
セールをしない多くのラグジュアリーブランドは、ブランド価値を毀損しないため、売れ残り商品を処分している。「バーバリー(BURBERRY)」は、売れ残り商品を毎シーズン焼却処分していたことを批判され、18年9月にこれを廃止した。
「バーバリー」は現在、そうした商品の再利用やリサイクル、寄付などを行っているほか、19年3月には英慈善団体スマートワークスと提携し、従来の寄付に加えて困窮している女性が仕事の面接に行けるようにスタイリングアドバイスも提供している。(後略)【4月23日 WWD】
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【食品ロス削減にアプリ活用】
食品ロスを減らす取り組みの一環として、「TooGoodToGO」(捨てるにはまだ早い)というアプリが活用されているとか。期限切れ間近商品の「福袋」販売みたいなもののようです。
****フランス発のアプリで「食品ロス」から世界を救う****
(中略)
「TooGoodToGO」アプリが貢献
フランスでの食品ロス法の可決を受け、あるベンチャー企業が食品ロスを無くすべくアプリを開発。その名も「TooGoodToGO」(捨てるにはまだ早い)。
2016年にフランスで登場してからわずか3年で、11ヵ国でサービスを拡大し、今では1200万回のダウンロードを突破した人気急上昇のアプリだ。
利用者は安く食品を購入でき、店側は廃棄するはずの物を販売できる「WinWin」なコンセプトだ。
アプリを開くと、位置情報を元に近場で賞味期限間際の売れ残りを1/3の値段で提供している店のリストが表示される。
「簡単で気楽に使えるのがこのアプリの強み」と話してくれた利用者の一人、クリストフさんは「何が出てくるかわからないのも一つの楽しみ」と話す。
ワンクリックで予約したのち、回収時間が提示され、「びっくり箱」(Paquet surprise)としてあらかじめ中身が分からない仕組みとなっている。
普段買わない食品も含まれることから、発見や楽しみも味わえるのが特徴で、環境問題に関心のない人々でも安く買うことができ、結果的に食品ロス対策に貢献できるのだ。クリストフさんは「環境問題に関心を持っていなくても、利用したい気持ちにするこのアプリはいいコンセプトだ」と話してくれた。
青果店やパン屋も、アプリのおかげで食品ロス削減に貢献をしている。これまで、法律上で廃棄することが決められていた食品を売ることができ、しかも歓迎される。(中略)
「モンブラン」で有名なパリのパティスリー「アンジェリーナ」が、実はアプリを活用している。「お持ち帰り用で」850円のケーキが、アプリを使うと250円で買うことができ、かなりお得になる。
「食品ロス」だけでなく「製品ロス」も禁止へ
アプリの認知度が高まる一方、果たして十分に成果はでているのか?
アプリの開発者は「3年で1700万食を救うことができた。今後より多くの食品ロスを防げる」と期待感を示した。重要なのは、店側が正直に、まだ食べられる食品を明らかにすることだという。
そのため、もし腐ったものが販売されている場合は、管理者が利用者の報告をいち早く察知し、店側に問い合わせることが可能なシステムになっている。
利用者が安全に食べられてこそ、食品ロスへの継続的な貢献が可能なのだ。
フランス政府はさらに、「食品ロス」だけではなく、食べ物以外の「製品ロス」を2年から4年以内に禁止する方針を発表した。売れ残りを廃棄することを禁止し、寄付またはリサイクルを義務付ける内容だ。
果たして、先進国フランスが、無駄の削減に成功するのか今後を見守りたい。【8月22日 FNN Prime】
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このアプリ「TooGoodToGO」については、フランス在住の方のブログなどで紹介もされています。
https://ameblo.jp/latablequotidienne/entry-12430968972.html
http://ma-douce-france.net/2019/06/17/toogoodtogo/
「福袋」的な要素がありますので、面白いのですが、素材を使いきる調理技術も必要になります。(購入した商品を余らせ、捨てることになっては元の木阿弥ですから)
ちなみに、私はスーパーには閉店も近い時間帯に行って、期限切れが近い3割引き・半額商品をよく買います。
単に「格安品」を買いたいというだけのことですが、結果的には食品ロス削減に貢献もしています・・・ってね。