なんだかすごくいいことがある気がして早くに目が覚めて。やがて思い出した。そうだ今日は奴が友だちと出かけるのだ!
奴が出ていった後、はじめてのおつかいを見守るような気分でベランダから見ていて、友だちに声をかけられ、じゃれあいながら肩を並べて歩く姿を見ながら胸がいっぱいになった。
学校は行かなくていいよ。こうして友だちとの縁さえ繋がっててくれれば。兄ちゃんもバレー部の仲間ができてから人を信頼できるようになってだいぶ強くなったしなぁ、結局のところ親の力なんて…なのだ。
そして今日。唐突に小説が読みたくなったと言ってきた。しかも『アルジャーノンに花束を』だと。ヨルシカという人のアルジャーノンという歌がすごく好きだったんだそうだ。それで小説を知ったと。
私はここのところコタツで本ばかり読んでる、その姿を奴は見ている。関係ないのかなぁ。
いややはり。鏡のような気がする。性質も私にそっくり、奴の姿は私をそのまま映し出す。
ということはですよ、人との関わりを避け、人付き合いを面倒くさがる奴の姿は、私のそういう部分を察してのことだろう。
自分のやるべきことが、色々見えてきた。いやちがう、「べき」ではなくて、やりたいことを心から楽しみ人生を謳歌する、そんな姿勢を見せるのだ。