ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

WAVES/ウェイブス

2020-04-10 23:56:47 | あ行

フレッシュさ間違いなし!

 

「WAVES/ウェイブス」71点★★★★

 

 

********************************

 

マイアミの高校に通うタイラー(ケルヴィン・ハリソン・Jr)の人生は

キラッキラに輝いていた。

 

裕福な家庭に生まれた彼は、レスリング部のスター選手。

美しい恋人(アレクサ・デミー)ともラブラブで

父の期待は少々重荷なものの、

その未来は、万事順調――なはずだった。

 

しかし。

ある日、あることをきっかけに

タイラーの人生は予期せぬ方向へと向かっていく。

 

そして彼に起きた出来事は、

兄の影で目立たない存在だった

妹のエミリー(テイラー・ラッセル)の人生をも

大きく変えていく――。

 

********************************

 

 

こちらも「フェアウェル」同様、

「ムーンライト」(16年)「レディ・バード」(17年)

「ヘレディタリー/継承」(18年)の「A24」スタジオが手がけた作品です。

 

これはフレッシュさ間違いなし!

でも、あんまり明かしてしまうとつまらないので

ストーリーについては、知らぬままご覧いただいたほうがいいと思う。

 

でも、知っておいてほしいのは

この映画、135分あるのですが

前半と後半があり、

 

後半でガラッと視点が変わって

ハマリ方も変わってくるので

ぜひ、味わってほしい、ということなんです。

 

まあ、このへんでやめておこう、という方はここまでに(笑)

 

 

 

まあ、少しだけ明かしますと

実際、話は普遍的でなんてことないんです。

 

冒頭から、斬新なカメラワークや

「音」を、視覚的に見せる試みは

たしかに効いているんですが、

 

主人公は

レスリング部の花形スターで、リッチな家に住む17歳男子で

周囲からの期待や、「がんばらねば」というプレッシャーなど

うーん、別に普通じゃね?

という感じもする。

 

ただ、父親との関係や

ちょっと母との間に距離がある様子など

ところどころに、カツン、と引っかかるものはある。

 

そして、やがて彼の日常が大きく転調するのですが

 

しかも、

それはあくまでも「前半」なんです。

 

で、後半。

イケイケだった兄の、ある出来事から

視点は彼の妹にバトンタッチする。

 

その妹のパートがはじまると、

監督の意図が、何を描きたかったのかがわかり

かなり腑に落ちました。

 

 

人と人が出会い、まぶしい光と愛に満たされ、

ぶつかり、罵り合い、

その結果もたらされた悲劇や死に傷つく。

そんな人の営みは、愚かなほどにめぐりめぐり、繰り返される。

 

そんな人の世に現れては消える

「きらめき」。

 

前半から繰り返される

音と光の洪水も

 

その感情の波動=「WAVES」を

感触とともに、ここに写そうとしたんだろうな、と。

 

 

若者たちの刹那が、たしかに光と音に波打って留め置かれているので

若い世代はより共感できるかもしれない。

 

でも、そんな「世代くくり」だけでも、もったいない気もする。

と言いますのも

監督のトレイ・エドワード・シュルツ(1988年生まれ)は

あのテレンス・マリック監督の

「ツリー・オブ・ライフ」(11年)などに撮影アシスタントとして参加していたそうで

なーる。

 

触感を大事にするような映像作り、

師匠につながってる感、ありあり!

 

いずれにせよ期待のホープ、であります。

 

★近日公開。

「WAVES/ウェイブス」公式サイト

 

※公開情報は公式サイト、劇場情報をチェックしてください。

よきタイミングでご鑑賞いただけることを願っています。


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« フェアウェル | トップ | 劇場 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (まつこ)
2020-04-16 13:35:14
ぽつお番長さまこんにちは。
4月から公開の映画を楽しみにしてましたが、
コロナのせいで泣
「在りし日の歌」から記事にされた映画、全部観たかったです・・・上映されず終わる作品も出てくるかと思うと残念です。
2020年のセザール賞関連映画も上映が厳しそうですね・・・
今はおウチ映画を楽しみつつ、新しい映画の記事を楽しみにしてます!

追記「レ・ミゼラブル」は心が震えました!「理想の暮らしのつくり方」は自分もいい人になった気分になりました笑
ありがとうございます! (ぽつお番長)
2020-04-17 23:45:11

いやいや、本当にありがとうございます。

古今東西かなりのディザスター映画や
(ゾンビ映画もコアではないけど、そこそこは・・・)
歴史の過ち系も観ていたつもりでしたが
(特にナチス前夜・・・)

予想を超える現実に
寒くなる日々です。

新作映画は公開タイミングとの兼ね合いが
まだまだ難しいところではありますが

少しでもお役に立てれば嬉しいので
(勝手に、笑)ちみちみ更新しくつもりです。

応援してくださる方がいてくださることが
本当に嬉しいです。

映画の灯を消さぬように
がんばりませう!

コメントを投稿

あ行」カテゴリの最新記事