ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

パブリック 図書館の奇跡

2020-07-19 01:12:54 | は行

米で公立図書館が

ホームレスの避難所になっている現実に着装を経た作品。

 

「パブリック 図書館の奇跡」71点★★★★

 

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米オハイオ州、シンシナティの公共図書館で働く

図書館員スチュアート(エミリオ・エステベス)。

 

仕事にも人にも実直な彼は

毎朝、開館とともにやってきて閉館までを過ごす地域のホームレスたちとも顔なじみ。

 

一般客の迷惑にならないように微妙な配慮をしつつ

ホームレスたちともうまくやり、なんとか均衡を保っていた。

 

が、ある寒波の夜。

図書館の外で寝ていた顔見知りのホームレスが凍死したことに

スチュワートは衝撃を受ける。

 

そして次の夜。

閉館しようとしていた図書館で、スチュワートは常連のホームレスから

思わぬことを告げられる。

 

「今夜は帰らない。ここを占拠する」――――。

 

そして、なりゆきから

70人のホームレスたちとともに

図書館に立てこもることになったスチュワートだが――――?!

 

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昨年、予想外の大ヒットとなった

フレデリック・ワイズマン巨匠のドキュメンタリー

「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」(17年)。

この映画にも図書館がホームレスの避難所になっているという話が登場していまして

ハッ、なるほど。。。と感じたのですが

 

その現実に着装を経て、

俳優のエミリオ・エステベスが主演&監督したのが、本作。

 

 

寒波の夜、図書館に立てこもったホームレスたちと、

彼らに味方した図書館職員スチュアート(エミリオ・エステベス)の一夜を描くのですが

 

そこに

次期市長をねらう嫌味な検察官(クリスチャン・スレイター)

ホームレスになった息子を探す刑事(アレック・ボールドウィン)、

そして

スチュアート自身にも実はある過去があった――――と

三者のドラマが絡み合っていく、という構成です。

 

 

凍死者が出るほどの寒波なのに、シェルターは満杯。

そんなホームレスたちを放っておけない図書館員スチュワートは

「代わりの避難場所」を求める

平和的なデモとして「占拠」を始めたのですが

 

しかし

政治的なイメージアップをもくろむ検察官の偏った主張や

メディアのセンセーショナルな報道によって

スチュアートは心に問題を抱えた「アブない容疑者」に仕立てられてしまう。

 

やがて警察の機動隊が出動。

追いつめられたスチュアートと

ホームレスたちが決断した驚愕の行動とは――――?!とハラハラの展開。

 

 

正直、「映画」としては全体にもうひとさじ、なにかが欲しいところではある。

あるのですが、それでも

いやいや、十分にハイクオリティではあって。

驚愕の収束法もおもしろく、ハッとさせます。

 

なにより、いい題材を使い

すごく入り込みやすく、社会問題を考えさせてくれるなと。

 

ここから先、問題の深部へ進むかは

観る我々に委ねられているんだなと

思うのでありました。

 

★7/17(金)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

「パブリック 図書館の奇跡」公式サイト


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