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第2弾:蒼い時のドリームキャッチャー14話

2022-10-07 11:49:33 | 第2弾:蒼い時のドリームキャッチャー


和志との喧嘩で直也は自分の何かがわかりはじめてきます。喧嘩という暴力がどういうものなのか、直也自身どうすべきかを考えはじめています。教員室をでた二人は、お互い言葉はなくカバンを教室にとりに行きますが教室の扉を開けると、なんと言っていいか直也と和志には言葉も出ませんでした。直也の仲間たちは全員ニヤニヤしながら和志にボコボコにされた仲間も教室で待っていてくれたのです。
「あ~ぁ、肋骨折れるかと思ったぜ。いてぇなぁ和志よぉ」
仲間らはやられても、めげることもなく声をかけていきます。
「わるかったな」と和志は小さな声であやまります。
「なぁ、和志、オレたちと仲間にならねぇか」と直也は和志に声をかけました。
「何くよくよしてんだよ、あんだけの喧嘩できんだったら、仲間になれよ」
仲間たちは和志が直也の友達ということも知っていたし家庭のことも良く知っています。和志の家は、たたみ屋を営んでいました。
バブルの崩壊と共に、経営は悪化をたどるばかり、両親もいたが毎日のように家の中で大声を張り上げ、父親と喧嘩をして酒とギャンブルにおぼれていきます。それでも何とか生活は成り立っていたが和志と父親の喧嘩は毎日のようで時には殴りあうことも殺人未遂に近いこともあったようです。和志には妹がいましたが毎日のことで、いつも家の隅の方でおびえていたのです。母親は、時には包丁を持ち出すことも時には数台のパトカーで警察が来ることもあります。近所の人たちも、とても怖がっていましたが何とかしてあげたいという気持ちはあるものの、和志に笑顔で挨拶を交わすことが精一杯だったようです。和志は直也の隣の町内で、小さい頃ソフトボール大会で争った相手でもありました。負けず嫌いで頑固、ソフトボールの練習場所は小学校の校庭で、どっちが先にはじめるかでよくもめて喧嘩もよくしていました。同い年として友達というか、ライバルというべきか。小学生の時は経営も良く、父親は優しくバッドを持ちノックやキャッチボールなどをして色々教えてくれていました。あの頃の和志には、町内でも仲間と呼べる存在があったが、父親の変化で、その仲間たちは和志と遊ぶことも、あっても声をかけることもしなくなってしまったのです。和志には、友達さえ信じられず、いつもいらだち直也と同じ怒りと憎しみを感じていたようでした。両親の愛情を感じられていたのは、物心がついて小学五年生までだったのでしょう。直也は、小学校の時は和志の家でよく遊んでいました。中学に入ってからは、孤独感を感じていたのです。模擬テストや抜き打ちテストのほとんどは白紙で提出していました。教員室でも問題行動として担任の先生は何度も和志の家に足を運んでいたようです。直也は自分の苦しみは仲間たちや先生たちによって少しは救われていました。和志は、先生たちの声も、あれほど仲良かった仲間たちの声すら聞くことはありませんでした。和志は一匹狼のようで直也は和志に声を何度もかけようとしたが声をかけることはできませんでした。中学に入ったときから和志の姿をみると変わってしまったと直也は思っていたのです。変わった理由も直也は知っているだけに声をかけませんでした。先輩たちにも、目を付けられていている和志、下手をすると先輩たちと全面戦争にもなりかねなかったのです。先輩たちに目を付けられていたのは直也も同じでありましたが、先輩たちが歩いてくると仲間たちが先輩と直也の間にさりげなく壁をつくります。直也は何度も、呼び出されながらも、その場所には行かず無視していました。仲間たちも喧嘩には慣れていたようです。しかし、直也たちは喧嘩をさけるように遊んでいました。和志は、いつも一人です。体育の授業でも体操服には着替えず、体育の授業を受けるクラスメイトの姿をみていただけです。教科書も持ってはきません。教科書といえば、直也の仲間たちは教室のロッカーに置いてあったから和志の行動となんら変わりはありません。数年の間、和志は一人で悩み苦しみの中、妹を守っていたのです。妹は父親に蹴られたり殴られたり、それを見て和志は妹を守ろうとしていたのです。直也と和志は、喧嘩の後、自分が今どうすべきか同じように考えていました。和志の今は仲間をつくること直也は仲間ではなく怒りと憎しみをどこで吐き出したらいいのかを考えます。地元では、空手教室や柔道教室、ボクシングジムなどがあり直也の出した答えはボクシングジムでした。
このボクシングジムを運営していたのは、クラス委員の小幡由子の叔父にあたる人でした。由子には黙って、授業が終わってから週三日ボクシングジムに通いはじめます。由子の叔父は直也のことを知っています。子ども会で直也他仲間たちもお世話になったことでした。ボクシングジムには四人が通っていて、そのうち一人がプロテスト前でした。本来なら、プロテスト前のスパーリングは直也以外で行うことでしょうが、通いはじめて三回目の日、コーチは直也を指名します。直也の練習は、基本的なものでしたが、体系といい、サンドバックを叩く姿は、叩くのではなく何かに乗り移られ殴るような、そして何かから逃れるような叩き方でした。その直也の姿を見たコーチは直也の気持ちも考えながら、あえてスパーリングの相手にしたのです。相手の名前は「工藤 靖(くどうやすし)」といい直也とは身長差が十五センチ低い相手でした。スパーリングは三ラウンド。一、二ラウンドは軽いスパーでしたが、三ラウンド目になると直也はほとんどパンチが出せない状況の中、直也のマウスピースは天井へと飛んでいきました。その後のことは意識を失った直也。しばらくすると直也は床のマット上で天井を見ています。
「本当に無理しちゃって、馬鹿」
横を振り向くと由子の姿がありました。この日以来、直也に変化が起こります。週三回のボクシングジム、そこにはいつも由子の姿がありました。そして直也の重い荷物がこの時の体験で少し軽くなったようです。まじめに練習をする直也には、今まで持つことのなかった「自分の自信」というものが生まれていきます。由子は直也がジムでの練習の時は、ジムのベンチで直也を見つめていました。由子は保育園の時と一緒だと思いながら。ボクシングジムでの練習になれてきた直也は格闘技と喧嘩を比べていました。由子もタオルを肩に掛けてあげたりしています。由子はこんな時間がもっとあればいいと思いながら直也を応援していました。学校での直也とボクシングジムでの直也は全く違う人物のように感じられるほどでした。学校では中間たちを大切にし、ジムでの練習では、自分との格闘をしていたのだと思います。
「ボクシングは自分との戦いだぞ、相手はそう簡単に倒れてはくれないからな、それから、もしこのままでプロテストを受けるならその覚悟をしとけ」
コーチが直也を認めたときの言葉に直也は黙ってコーチの言葉に耳を傾けます。直也がボクシングジムに通っていることを知っているのは由子だけで仲間たちに知られることはありませんでした。


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