子供のころ、通っていた塾を勝手に辞めてしまい、父親に諭されたこのことわざをいまだに忘れない。その意味するところは、立ち去る者は、自分のいた場所を汚れたままにせず、綺麗にしてから行くものだという戒めであり、引き際は綺麗であるべきということである。
これを現代サラリーマンに具体的にあてはめると、退職するときは会社の悪口を言ったり、社長や仲間たちと喧嘩して辞めてはいけない。後任者に引継ぎをきちっと終えて、後々辞めた会社に遊びに来れるくらいの清々しい気分で退職しようではないか。と言うようなことであろう。
さて10回以上転職を繰り返した私であるが、残念ながら亡父の教えを忘れ一度だけ「飛ぶ鳥跡を濁した」ことがある。それもなんと、人生で初めて就職した会社を退職した時だった。
まず返品工場という配属先が気に入らなかった。それで世間知らずで鼻っ柱だけが強かった私は、同じ部署の先輩と揉めた挙句、いきなり退職願いを提出してしまった。さらにせっかくなだめてくれた人事係長にも文句の言い放題。意地を張ったまま、入社後僅か3か月でこの会社を辞めてしまったのである。
せっかく業界第一位の優良会社に就職したのにと、母に泣きつかれたがもう後の祭りだった。そしてその罰だと言うかのように地獄の日々が待っていた。
それからは毎日が職安通いと、朝日新聞の求人欄を舐めるような毎日が続いた。職安でいつも目に付くのは自衛隊の求人ばかり、当時は自衛隊に入隊希望すると、送迎車が来ると言われたほど隊員が不足していたようだ。
また新聞の求人も工員とかパチンコ屋の店員と言ったものが多く、事務系の募集をしているのは中小企業ばかり。大企業は新卒しか相手にしなかったのである。
そんなある日、中堅の優良会社の総務部に内定が決まったのだが、突然内定取り消しの電話があった。がっかりして元気をなくした私を見た母が、その会社に電話をかけて無理矢理内定取り消しの理由を聞いた。理由は簡単だ。3か月で辞めた会社の人事係長に、私の退職理由を聞いたからだった。
やはり…「飛ぶ鳥跡を濁さず」を守らなかったからである。さてその後の「運よく再就職するまでの棘の道」については割愛させてもらうが、凝りもせずさらに何度も転職を繰り返すことになる。だがそれからは、少なくとも「飛ぶ鳥跡を濁さず」の教えだけは守り続けたつもりでいる。
作:蔵研人
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