猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

ひとくず

2023-03-15 22:01:28 | 日記
2019年の日本映画「ひとくず」。

母親の恋人から虐待を受け、母親からは育児放棄されている8歳の少女・鞠
(小南希良梨)。ガスも電気も止められた家に置き去りにされた鞠の元に、あ
る日、様々な犯罪を繰り返してきた男・金田(上西雄大)が空き巣に入る。幼
い頃に自身も虐待を受けていた金田は、鞠の姿にかつての自分を重ね、自分
なりの方法で彼女を助けようと、鞠を虐待していた母親・凛(古川藍)の恋人
を殺してしまう。一方凛も実は虐待を受けて育ち、そのせいで子供との接し
方がわからずにいた。金田と凛と鞠の3人は、不器用ながらも共に暮らし始
め、やがて本物の家族のようになっていく。

「劇団テンアンツ」を主宰する俳優の上西雄大が監督・脚本・主演などを務
め、児童虐待をテーマに描いたヒューマンドラマ。
様々な犯罪を重ねてきた金田はある夜アパートの1室に空き巣に入るが、そ
こには電気もついていない部屋でぽつんと座っている少女がいた。金田は「
電気代払ってねえのか」と話しかけ、一目で育児放棄されているとわかるそ
の少女にかつての自分を重ね合わせる。その日から金田はその少女・鞠の元
に通い、面倒を見てやるようになる。やがて鞠の母親・凛の恋人が鞠を虐待
しているところに遭遇し、金田は男を殺してしまう。
万人受けするタイプの映画ではないと思うが、いい映画だった。子供の虐待
シーンなどは目を覆いたくなるほど。でもこういった現実は実際にあるのだ。
自らも虐待を受けて育った金田は鞠のことを放っておけなくなる。鞠はずっ
と学校に行っておらず、担任教師が児童相談所の職員を連れて訪れるように
なるが、鞠は玄関を開けずに金田と一緒にいる。そのくらい金田になついて
いた。鞠は金田のことを「泥棒のおじさん」と呼んでいたが、「いちいち泥
棒ってつけなくていいんだよ」と言われ、金田のあだ名であるカネマサと呼
ぶようになる。
凛も目の前で自分の恋人を殺し、やたらと娘の世話を焼いている金田を最初
は変に思うが、次第に心を開いていく。金田が凛に「お前、親にかわいがら
れてないだろ」と言うシーンは印象的だった。同じ経験をしている金田には
わかるのだ。金田は本当に鞠には面倒見が良く、一緒にラーメンを食べに行
った時もお椀を別に持ってきてもらい、それに麺を移して食べさせるなど、
まるで親のようである。ある日金田は鞠の胸の辺りにひどい火傷の痕がある
ことを知り、何とかして傷を治してやりたいと思うようになる。
凛が「子供のかわいがり方がわからない」と泣くシーンは印象的ではあるが、
自分も子供の時虐待されたからと言ってもやはりそれは言い訳だと私は思う。
みんな子供ができた時、子供のかわいがり方なんて誰かに習う訳ではない。
本能的なものではないかと思う。それができないのはその人の責任だと思う。
監督、主演の上西雄大はちっともハンサムではないし、いかにも劇団主宰者
といった雰囲気の人だけど、金田の役によく合っていた。考えさせられる映
画だった。




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4 コメント

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Unknown (まかろん)
2023-03-16 20:27:44
杏子さん、今日は。
今回も読みごたえある映画のレビューでした。😊

>自分も子供の時虐待されたからと言ってもやはりそれは言い訳だと私は思う。

そう思われる気持ちもわかりますが、
少なからぬ数の人がそういうからには、
そうなってしまうものではないでしょうか。
(わたしは子供がいないので、自己弁護ではないです💦)

わたしも虐待を受けて育ちました。
父親のことは許せないけれど、
自分が子供をもったら・・父と同じことをしてしまうように思います。

自分で勝手にこれはこうあるべき、というルールを
決めて、子供がそれを成し遂げられなかったら、
猛烈に腹がたって、無抵抗な子供を殴ってしまうような気がします。

自分もそうされて、苦しんだのに。


わたしも先日、ある人の不登校の児童に関する記事を見て、
正直、甘えていると思いました。
わたしは逃げ場がなく、不登校など出来なかったので。

でも、本人たちは辛いのですよね。
こちらはそんなの、自分の心の持ちようでしょ、
と思うことでも、

一定数そういう人がいる、ということに関しては

そうなってしまうものなのだろう、

と思うくらいはしてみるのが良いのでは、と思います。
(正直、いまだに不登校は私も理解ができてません🙇‍♀️)


でも杏子さん、誤解しないでほしいのですが、

>自分も子供の時虐待されたからと言ってもやはりそれは言い訳だと私は思う。

という言葉は、虐待を受けた身としては、
涙が出そうに嬉しい言葉でした。

ほら見ろ、と父に言いたいです。
(見せたりはしませんけど😅)

こんなにも、あり得ないって思っている人がいるじゃないか、って。🙏


ご不快に思われていないことを願います。
とても読み応えある、記事でした。
いつもながら、観てみたいなぁと思いました。🙏
Unknown (杏子)
2023-03-17 03:15:27
>まかろんさん
コメントありがとうございます。

>こどもの時虐待されたからと言ってもやはりそれは言い方だと私は思う。
そういうことも実際あるようですね。
虐待の連鎖って言いますよね。
でもそれでも私は本人の責任だと思います。

私は子供が生まれた時戸惑う部分はありましたが、
やっぱりとてもかわいかったです。
なので精一杯かわいがって育てたつもりです。

子供たちは私よりはるかにしっかりした子になりました(笑)

私の両親はもう高齢ですが、私を虐待した認識はないようです。
そんなものなのでしょうね。
いじめを受けた方は一生忘れないけど、いじめた方は忘れているんですよね。
もう今さら償って欲しいとは思いませんが。

不登校に関しては私も甘えだと思います。学校に行けないんじゃなくて
行かないんだと思っています。
私も行き場がなくて、不登校なんてできませんでした。

まかろんさんが虐待を受けて育ったという、私と共通項があって嬉しいです。
嬉しいというのは変な言い方ですが。
こういうのって経験した人にしか気持ちはわかりませんものね。
少女だけは幸せに・・・。 (ウラジーミル・アスポン)
2023-03-20 03:23:58
泥棒やるような奴が意外にも8歳の少女を救ういい奴だった事は、
映画としては面白いですね。
でも、現実は、いいやつである確率は少ないかなぁと思いました。

悪い事している人がイイ事やった方が話としては、
インパクトありますからねぇ・・・


一方、聖人君子に見える人が少し不倫しただけでガタガタいいますね。
不倫って家族には酷い事でも大勢の人には迷惑かけてないです。

聖人君子に見える人が8割いいことやって、
残り2割で悪い事やっているだけなのに、
悪い2割がバレただけでこけおろされるから、
真面目に生きるのはわりにあわないと思えてしまいます。


7割悪で3割いい奴だとしたら、
いい奴要素が聖人君子より低いですよね。
その3割でいい奴扱いになるのが物語の傾向ですね。

母子家庭のアパートの1室なんてたいして金も無いのに狙う事が
ビックリだけど、金のありそうな所はセコムとかしていたり防備
をしているから、かえって難しいかもしれないから、
ケチくさい稼ぎしかできなくても、貧乏くさい
アパートに空き巣に入ったんでしょうね。


電気代を払えないようなド貧乏な家庭から、さすがに盗み気にもなれないですよね。
育児放棄もされてて可哀想ですし・・・。

過去の自分と似た境遇の
少女に急に同情するんですね。

母親は男にだらしが無くて自分の子供を
虐待するような男でも付き合うし、
自身も虐待している感じで、ろくでもないですね。


ところで、目の前で虐待されてる鞠を見て
思わず、殺してしまった男の死体はどうしたのか
気になります。
金田は、逮捕された様子もありません。

そして、恋人を殺された母親の凛は金田を警察に
つきだしたりもしてませんね。
自分の娘への虐待がバレるのが怖いからなんでしょうか・・・。
金田に心惹かれてたからなのか、あるいは恋人が
死んでせいせいしたのか・・・どれでしょうね。

とにかく虐待母のせいで、酷い火傷の傷もひどい目に
あった少女にも優しくしてくれる人がいるのはいいですね。

でも、殺人をおこしてるし、このまま、3人が親子
のように幸せになれるんでしょうかね・・・。

虐待母の凛も金田も警察行きになっても
女の子だけは救われてほしいですね。
Unknown (杏子)
2023-03-20 05:33:32
>ウラジーミル・アスポンさん
コメントありがとうございます。実際はチンピラみたいな奴が実はいい奴というのは
あまりないと私も思います。

芸能人の不倫については叩きすぎだと思います。
おっしゃるように、不倫って家庭の問題ですよね。
視聴者には何も迷惑をかけてないです。
1度不倫をしたら何年間も叩き続ける、今の風潮おかしいと思います。

アパート暮らしの人はそんなにお金を持ってないと思いますが、
窓ガラスを割って簡単に侵入できるから空き巣に入ったんでしょうね。
そこで金田は鞠と運命的な出会いをします。

鞠の母親は男がいないと生きていけないタイプですね。依存体質というか。
これまでも男をとっかえひっかえしてきたんだと思います。

男の死体をどうしたのか、金田と凛は警察に捕まるのか…
それは映画を観てくださいとしか言えないのですが。
ラストは感動的でした。
子役がとてもうまかったです。

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