ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

花を摘んでもいいですか

2023-03-20 07:24:37 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「花を摘む」3月13日
 『「脱成長」と新しい社会』という見出しの記事が掲載されました。『ともに「成長主義からの転換」を唱える思想家』である京大名誉教授佐伯啓思氏と東大准教授斎藤幸平氏の対談を伝える記事です。その中に気になる記述がありました。斎藤氏の『一人一人が豊かに生きるための「富」が「商品」に姿を変えていく。森や水などかつてはみんなの共有財産(コモン)だった富を含め、あらゆるものが商品化され(略)コモンを広げていければ、新しい社会の萌芽をより具体的に描ける』という発言です。
 私はつれあいとほとんど毎日散歩をします。彼女は土手に咲く花を見て、「摘んでいっていい?」とよく訊きます。私の答えは「ダメ。この土手を管轄している役所の許可を得ないと泥棒になる」です。彼女はさらに「だって、このままにしておいても、しばらくすると業者が雑草と一緒に全部刈ってしまうんだよ。もったいないじゃん」と言い募りますが、私は、「元校長、窃盗で逮捕って記事になるよ」とはねつけます。彼女は「昔は入会地っていって、みんなお正月の松とか取ったんだけどな」と口惜しそうに言いますが、私は「ここは田舎じゃない。東京都23区、大都会だよ」と言い切ります。
 これは、私とつれあいの間で、もう200回くらい繰り返された会話です。私は、今回の記事を見て、彼女が言う「昔の入会地」がコモンなのだなと思いました。私自身は、東京生まれの東京育ち、入会地のような在り方に馴染みはなく、本で読んで知っているだけですが、地方出身の彼女にとっては、入会地は馴染みのある存在なのでしょう。そして、彼女が語る半世紀以上前の故郷のくらしは、とても魅力的なのです。
 還暦をとうに過ぎた私でさえ、入会地のない地域社会に何の違和感を抱かないのですから、今どきの若者や壮年者にとっては、より遠い存在でしょう。そもそもコモンという概念自体、理解不能に近いのかもしれません。
 しかしそんな彼らも、ハイキングに行き湧水を口にしたとき、「それはあなたの所有物ではありません」と言われたら鼻白むことでしょう。我が子が清流で川ガニを捕まえた途端、漁業権の侵害ですと言われればエッと驚くはずです。
 誰もが意識するしないは別にして、コモンの存在がある種の潤いを生むことを感じていると思われます。コモンの概念を学校で学びの対象とすることで、少し生きやすい社会に近づくことが可能になるのではないでしょうか。コモンの維持に最も大切なのは、我欲を抑えることです。まずここから取り組んでみてはどうでしょうか。

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