ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

本当のプロ

2024-04-18 08:30:32 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「プロ」4月12日
 川柳欄に、久喜市M氏の『材料は並みを使ってこそのプロ』という句が掲載されていました。本日の秀逸です。意味を解説するまでもありませんが、大間の本マグロ、松阪牛、間人ガニなどの高級品を使って旨い料理を作っても、それは当たり前で名人でも達人でもない。近所のスーパーで売っている庶民が買うような材料を使って美味しいと唸らせる料理を作るのが本当のプロの料理人、ということです。
 全くその通りです。私がこの句を目にして直ぐに浮かんだのは、料理とは関係のないことでした。新たな教育課題が学校に持ち込まれようとするとき、先進的な実践に取り組む研究校が設けられるのが普通です。生活科、総合的な学習の時間、小学校英語、プログラミング教育等々、例外はありません。そして、研究校での先行実践の結果、新しい教育課題の導入が見送られたり、延期されたりしたことはありません。初めから、大きな成果とわずかな課題が予定されているかのように。
 私はこうした状況を見て、「○○小学校なら成功するよな。子供のレベルは高いし、保護者も理解があって協力的だからな。A校長は~の実践家だったし」と、半分白けた思いを抱いたものでした。つまり、一級品を使って料理を作って提供している料亭の料理がおいしいのは当然という感覚でした。
 学力テストの結果は中の中、いくつかの学級には、問題行動の対応に苦慮する子供がいて担任以外の教員が補助に入ってやっと授業が成り立っている、おまけに保護者から苦情が絶えない指導力が疑われる教員がいて校長が対応に苦慮している、というような一般的な学校が研究校に選ばれることはほとんどないのです。本来であれば、そうした普通の学校において新しい教育課題に取り組んでこそ、問題点や課題が見えてくるものであるはずなのに、です。
 また別の見方もできます。かつて「荒れる学校」が話題になった時期がありましたが、生徒が授業中に平気で立ち歩き、勝手に教室を出ていくものもいる、教室内で大人しく座っている生徒の半数は、漫画を読んだりスマホを診たりしている、校舎裏の階段には煙草の吸殻が落ちていて、生徒間の暴力沙汰が絶えないというような学校もまた、研究校には相応しくないということです。腐りかけた材料では一流のシェフにもおいしい料理は作れませんから。
 全国に学校は実に多様です。子供の実態、地域の実情、家庭の状況、管理職の見識、教員の指導力、過去の出来事、全て異なっているのです。キーワードは「並み」です。新しい教育課題の導入の是非、教育施策の成果の検証、いずれも「並み」の学校で行ってこそ、意味があると考えます。

 

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