Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

§171「罪と罰」 ドストエフスキー, 1866.

2023-12-22 | Book Reviews
 言葉にはあらかじめ意味が在るからこそ、人が言葉を選んでいると思いがちですが、その人が置かれた環境や状況において、実は言葉がその人に語らせているのかもしれません。

「彼は何かしら奇妙な神秘的なものがあるような気がして、目に見えぬ何ものかの力と符号の存在を感じるのだった」(上巻 p.133)

 ところで、膨大な言葉の数々には"それがそうである"という意味もあれば、"それがそうではない"という意味もあり、ひょっとしたら、言葉が人に語らせているからこそ、正しいこととそうではないことが共存しているのかもしれません。

「きみの内部には、こんなけがらわしさやいやらしさが、まるで正反対の数々の神聖な感情と、いったいどうしていっしよに宿っていられるのだ?」(下巻 p.83)

 空想であれ、観念であれ、理論であれ、そして天国であれ、地獄であっても、それらはすべて存在するのではなく、言葉によって生成されたものであると考えると、その言葉に従って行動した結果のひとつが「罪と罰」というテーマなのかもしれません。

初稿 2023/12/22
写真「地獄の門」オーギュスト・ロダン, 1930-1933.
撮影 2012/08/24(東京・国立西洋美術館)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« #82「もうひとつの卒論」 | トップ | ♪61「それぞれのクリスマス」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿