板の庵(いたのいおり)

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㉗エッセイ:「東大寺大仏とモンゴル帝国(27)」2020.08

2020-08-09 11:54:12 | エッセイ
㉗エッセイ:「東大寺大仏とモンゴル帝国(27)」2020.08

人類は火星探索機の打ち上げ、iPS細胞技術(多能性幹細胞)などさまざまな科学技術などを進歩させてきた。しかし、今回の新型コロナウイルスに見るようにウイルスは次々に変異し、ワクチンや特効薬をあざ笑うように掻(か)い潜(くぐ)る。人類の歴史というのは、感染症に翻弄(ほんろう)されてきたことを改めて痛感する

日本でも奈良時代、「天平の大疫病」と呼ばれた天然痘の大流行が起こった。奈良・東大寺の大仏は、大地震、旱魃(かんばつ)・飢饉、疫病等に対する不安対策のためとして聖武天皇が大仏建(造)立の詔(みことのり)を出したのである。
当時は遣唐使や遣新羅(しらぎ)使の行き来で持ち込まれたのであろうと言われている。全国で約100万人から150万人が死亡したであろうと。奈良時代の推定人口は約450万人であることを考えると途轍(とてつ)もない死亡者数である。

大仏や国分寺などを各地に作るために疫病と飢饉の中、多くの労働者の提供や銅の徴収、寄進などが求められた。
この大仏の建造費は今の価格にすると約4657億円だそうだから、新国立競技場の3倍にもなるのである。

ところが、天然痘感染による大量の死者で労働不足が起こったために、復興政策として墾田永年私有財産法が作られた。自分が耕した土地は私有を許可することになり、その結果農耕地が増え生産性も上がってきたのである。

戦後GHQの指令によって地主から小作人に農地を取り上げた。農業生産性が爆発的に上がり、農家は潤い、餓死者がいなくなったのと同じである。
これは国難に際しては、大きな社会制度の改革が行われ、それまでの制度を打破して新しい力で乗り切る社会改革である。

ところで、歴史上誰もが知っている東ローマ帝国(ビザンツ帝国)(ローマ帝国:前一世紀~15世紀)では、543年にペストが大流行しひどい時期には、一日一万人も死亡していた。そのご200年もの間繰り返し流行が続いた。

地中海地方は人口の四分の一を失った結果、徐々に国力が低下、その後長期の征服戦争が衰退する要因となったのである。

さらに14世紀のペストの大流行ではユダヤ人は、イエス・キリストを十字架にかけたのはユダヤ人でその子孫ということでヨーロッパでは差別を受けていた。彼らは住むところも限られ、ユダヤ人街を作って住んでいた。
承知の通り、ヨーロッパでは公衆衛生の概念は全くなく、通りには人糞がばらまかれ、ネズミはそこら中に生息し、沢山の死体が川に捨てられる有様であった。

ところがペストが流行ってもユダヤ街からは患者が出ない。疑心暗鬼になった人々は、ユダヤ人が井戸に毒を投げ込んだのではないかと、デマを飛ばす者が出てきた。

しかし、ユダヤ街ではユダヤ教の教えに則って生活環境を清潔にしていた。それとネコを飼っていたユダヤ街にはネズミがほとんどいなかったのである。
このネズミがノミ、シラミを媒介してペストを流行らせることを誰も知らなかったために虐待につながったのだと。

これはいつどこでも起こる可能性がある。関東大震災の時に朝鮮人差別が一挙に噴き出す。朝鮮人の放火、井戸に毒投げ込みなどのデマのもと、朝鮮人虐待が起きてしまった。差別をしている側は報復されることの怖さからこういう行動に出るのである。

さて、14世紀のヨーロッパのペストの大流行では死人が多く穴を掘ってそこへ大勢の死体を埋めた。それが近年発見されて遺体からそのペスト菌のDNAが中国のペスト菌のDNAと一致したのだ。

モンゴル帝国によるヨーロッパの遠征と領土の拡大と一致するのだ。元と国号を変えたモンゴル帝国は1331年からペストが流行し始める。当然のことながらヨーロッパ遠征でペスト菌も持ち込まれたのである。

さて、新型コロナウイルスの抑え込みに成功したとされる中国で別の感染症が報告され騒ぎになっている。
雲南省健康委員会は、3月23日、出稼ぎに出ていた男性労働者が、ネズミを媒介とする「ハンタウイルス」に感染し、発症から3時間ほどで死亡したことを報告。同僚2名も検査に回っていると。

アジア・欧州で確認されているものでは腎症候を伴う出血熱を起こすので「腎症候性出血熱」と言われるもの。中国では毎年4万人程度の患者が出ているが、今のところパンダミックスの心配はないという。しかしいつ変異型になるかは知れず新型コロナウイルス以外にも警戒しなければいけない状況は、日本も中国と変わらないと。

厚労省は8月31日、医系技官トップの鈴木康裕医務技官が退任し、後任に福島靖正・国立保健医療科学院長を充てる人事を発表した。
鈴木氏の交代(7日付)には、「PCR検査」の検査体制や「アビガン」の承認などを巡りに内閣の不満が背景にあるとの見方である。

国内で新型コロナ感染の当初からPCR検査数不足を山中伸弥氏ら多くの識者が声を上げた。総理がPCR検査は増やすと約束したにもかかわらず遅々として実現しない。総理の力が及ばない官僚とは官僚組織とは何だろうかと、愕然(がくぜん)としたものだ。

中国武漢で一定の効果を認めたアビガンの緊急承認をも否定した。諸外国からは日本にアビガンの要請が相次いだ。 にもかかわらず、藤田保健衛生大学には正規の治験を求め、その結果から有意差(有効性)なし、承認できないとされたのだ。
世界からは、日本は証文の出し遅れとして、信用を落とす結果となるかもしれない。
この医系技官の石頭のおかげで、新型コロナ感染拡大防止の対策が遅れるばかりか歪んでしまった。世界からは日本の検査体制は間違っていることを指摘されているのだ。

PCR検査を増やせば入院患者が増えて医療崩壊に繋がるとした。しかし軽症者や無症状にはホテルという代替があるということまで頭が回らなかったのだろう。やる気になれば武漢並みに簡易ベッドをつくれるのだ。そのくらいの経費は、無料配布のアベノ・マスクの経費に比べれば安いものだと思う。
我が家にも不要な時に届いた、センスのない小さなマスクが置き去りにされているが、どう処分をしたらよいものやら。



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