*** june typhoon tokyo ***

Mia Nascimento / WAY WAVE @GARRET udagawa



 リアル・ソウル・シスターズとブラジリアンによる、華やかでフレッシュなマチネ。

 美人姉妹ソウル&ファンク・デュオのWAY WAVEによる定期公演〈第41回部員集会〉にミア・ナシメントがスペシャルゲストとして出演すると聞き、雨粒が傘から滴り落ちる朝に、東京・渋谷のGARRET udagawaへ。11時の開演を前にフロアを温めるべく、WAY WAVEのライヴDJを務めているDJ arincoがDJプレイを繰り広げている最中に到着。そのプレイのなかにはEspeciaの「ミッドナイトConfusion」もセレクトされていたが、ミア・ナシメントがEspeciaのメンバーだったということで、DJ arincoが気を利かせてくれたのだろう。

 2017年から本格的に始動した杏奈と優奈の小池姉妹によるWAY WAVEは、20代前半という若さながら、60~70年代ソウルやファンク、80sディスコなどに根差した楽曲をしっかりと歌ってきている。リアルタイムではない懐古の作風をティーンズや若手に歌わせるという手法は昨今はさして珍しくもなく、プロデューサーら制作陣の大人側がその趣に興じるばかりで、実演者はなぞらえているだけというグループも少なくないが、この小池姉妹は自らソウルやファンク、ブルースあたりを好んでいるようで、そういった楽曲群への愛情が歌唱からも伝わってくる。
 定期公演〈うぇいうぇい部 部員集会〉はゲストを呼びながら2018年1月より毎月定例会という形で開催され、本公演で41回を数えるとのこと。元来備わっている高い歌唱力に地道なステージの積み重ねがプラスされ、他のアイドル出自のシンガーとは一線を画している実力派だ。

 個人的にWAY WAVEのライヴには、HALLCAがゲスト出演した〈部員集会〉を2度(「HALLCA,WAY WAVE @渋谷 RUIDO K2」「HALLCA,WAY WAVE @渋谷 RUIDO K2」)、天野なつとのツーマンライヴ(「天野なつ ✕ WAY WAVE @下北沢CLUB251」)を1度とこれまで計3回観賞。今回が4度目になる。〈部員集会〉では序盤に姉・杏奈からライヴの演目を発表するくだりが恒例となっており(妹・優奈に「そろそろカンペを見ないで言って」と突っ込まれる)、ギター弾き語りとソウル・カヴァーのコーナーの間にミア・ナシメントのステージが挟み込まれることとなった。



 襟付きブラウスシャツ&ミニスカートの銀の上下に白のロングブーツ姿で登場したWAY WAVE(杏奈いわく「テーマはピンク・レディー」)。プリンス「キス」のフレーズを冒頭に組み込んだ「みつばちパンティーライン」を皮切りに、ジャクソン5「ABC」をはじめとするモータウン・サウンドを下敷きにした曲をファンキーブルース風にファットに歌う「Looking for woman」、冒頭2曲とは趣を異にしたややチルな雰囲気も帯びながら“Fly High Fly High”のリフレインが印象的なリラクシンなソウル「Half Moon」と、場数を踏んできたステージ度胸と自信から訴求力を得たパフォーマンスを繰り広げていく。

 本公演では、現在制作中という3rdアルバムの楽曲を中心に構成。前半では次回11月の〈部員集会〉のゲストでもある吉田哲人が作・編曲(編曲はユメトコスメの長谷泰宏と共同)した「SUMMER BREEZE」、優奈が詞曲を手掛けた、爽やかでキャッチーなメロディラインとともに“恋はメリーゴーラウンド”と歌う快活な「マジカル恋愛体質」を演じ、ソウル・カヴァー・コーナー後の終盤には、3rdアルバム楽曲お披露目のラストとなる新曲「レトロなステップのヴィーナス」、1番の女になれない哀しさと憎悪や嫉妬がない交ぜになる感情をファンキーに綴った「2番目の女」、ドナ・サマーやアレサ・フランクリンといったソウル・クイーン然とした佇まいの作風に高らかに鳴るホーン・セクションをプラスしたソウル・ディスコで、WAY WAVEのテーマ・アンセムにもなりそうな「WAVY GIRL」をパフォーマンス。初披露となった「レトロなステップのヴィーナス」は、タイトルにある“レトロ”の薫りを漂わせた歌謡曲テイストも含んだ、良い意味での無骨さが味となっている。本編ラストの「WAVY GIRL」は、拳を高く突き上げるスタジアムロック的なフレーズもあって、女性ならではの芯の強さが伝わる溌溂としたグルーヴィ・ファンクが心地よかった。



 ギター弾き語りコーナーでは、姉の杏奈が赤、妹の優奈がピンクのエレキギターを携えて「白と神様」と「東京CITY」の2曲を演奏。ピーターパンシンドロームをコンセプトに、夢を抱いて上京したものの夢にやぶれて飛べなくなった主人公を描いた「東京CITY」は、世知辛さやヒリヒリとした傷心が伝わる哀切なメロディラインと“口笛吹ながら東京CITY”という見栄を張る心境を綴った詞が印象的。このギター弾き語りコーナーでは好評だった場合は作品化が検討されるということらしいのだが、悲哀や切なさが滲むメロディが琴線に触れそうな「東京CITY」は、アレンジ次第ではクールなソウル・ポップにもなりそうな感じも受けた。

 薄手の色のジャケット&パンツスーツと柄入りブラウス姿に衣装チェンジした後に迎えたソウル・カヴァー・コーナーでは、シェリル・リン「ガット・トゥ・ビー・リアル」、ザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズ「ネヴァー・ストップ」、オリジナルのフランキー・ヴァリ以上に多くはザ・ボーイズ・タウン・ギャングのディスコ・ヒットで知られる「君の瞳に恋してる」の3曲を披露。なかでも優奈の推し曲という、他2曲と若干色が異なるアシッド・ジャズ曲「ネヴァー・ストップ」をセレクトしてきたのは意外だった。「ネヴァー・ストップ」はキャッチーではあるものの、それほど抑揚やキメのフレーズもなく、冒頭のフックがいわゆるサビという、どちらかというとクールなテイストの楽曲。それゆえ、盛り上げにはなかなかの手練を要すると思われ、ザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズであれば「ドリーム・カム・トゥルー」や「ユー・アー・ザ・ユニヴァース」(「ユー・アー~」はエンディア・ダヴェンポートではなくサイーダ・ギャレットの歌唱になるが)あたりの楽曲が盛り上げという意味では無難だろうが、そこは定評のある歌唱力でその杞憂を吹き飛ばすパフォーマンスでまとめてくれていた。


 さて、ミア・ナシメント。観賞は先月のmona recordsでのフリーライヴ・イヴェント〈Friday Night〉(「Mia Nascimento / ddm @mona redords」)以来。スペシャルゲストということで、ステージの持ち時間も限られていることから、ギター弾き語りでは「Miss you」ほか3曲を5分のなかに凝縮した、本公演用のメドレー・スタイルにアレンジするなどの工夫も見られた。

 冒頭の「不透明」では、青い照明とスモークがステージを覆う光景が、静かな深い海を漂うようなアンビエント感覚のあるクールなR&Bとリンクしたかと思えば、それが終わるやいなや、ささやくようなラップを繰り出した「KUMO」では、ミニマルなビートの上でチルなムードで創出。

 この2曲を終えたMCで、観客がほぼ初のミア・ナシメント観賞だと分かると、改めて「はじめまして!」と挨拶。その後、ギターを抱えて、しっとりとしたアコースティックなテイストの「Miss you」を弾き語り始め、センチメンタルなラテン調、乾いた夏風を感じさせるようなポップ・ロック調と移行するにつれて、フロアの熱も高まっていく。ソウルやファンクといった、言ってみればベタで明快なWAY WAVEとは対照的といえる、冒頭のアブストラクトな2曲の段階では、やや面を喰らったような感じもあったが、この弾き語りの終盤からはフロアをロック。ミアのフレッシュでキュートな魅力が窺える「Summer Me, Winter Me」から、リズミカルなクラップがグルーヴに拍車をかけるR&Bダンサー「Shake」ときて、ブラコンとハウスのメリットを取り込んだようなファンキー・ダンサー「Sweet Magic」へという流れも、フロアをほぼ占めていた初見の観客の身体を揺らせることに一役買っていたようだ。

 短い尺ながら、クールでセクシーな面持ちをはじめ、浮遊感あるウィスパーなラップあり、アコースティック・テイストあり、ファンキーなグルーヴありといった彩色豊かな作風とともに、全方位的にアジャストする音楽性と吸収力、その伸びしろも垣間見せたパフォーマンスになったといえそうだ。



 本編ラストの「WAVY GIRL」を終えてのアンコールでは、WAY WAVEとミア・ナシメントとのコラボレーションを。双方に楽曲を提供している関美彦が手掛けた楽曲からそれぞれ、ミア・ナシメント「Forget」とWAY WAVE「Summer Girl」を、DJ arincoとともにパフォーマンスしてエンディング。陰影のある物憂げなミディアム「Forget」とブリージンな疾走感にジョイフルなムードが溢れる「Summer Girl」を並べて、静と動、憂と喜という対照的な作風で締め、そのどちらの世界観にも入り込める小池姉妹とミア・ナシメントの対応力にも目を見張るものがあった。今後も関美彦プロデュース楽曲を提供していくだろうから、それぞれの楽曲を持ち寄ってのカヴァーもいいが、最初から3名のユニットに宛がう前提で楽曲を手掛けても、面白いのかもしれない。

 MCでも話題にあがっていたが、小池姉妹は妹にかまってもらいたい甘えん坊の姉・杏奈とそれをあしらいながらツッコミを入れる勝気な風の妹・優奈という関係性や、杏奈が丸みを帯びた輪郭の童顔で、優奈が目元が涼し気な凛とした輪郭というルックスも相まって、ミア・ナシメントも「最初は分からなかった」と感じていたように、どちらが姉かと問われることが少なくないとのこと。ただ、それが歌唱においても同じかというとそうではなくて、ともにパンチあるヴォーカルを繰り出すことが出来るが、優奈がインパクトある中音域をメインに直線的に前面へ押し出した、楽曲のイメージを構築するヴォーカルなのに対し、杏奈はメインのメロディでエネルギッシュに歌うのはもちろん、ハモリやコーラスではちょっとした押し引きを巧みにこなせる幅広さがある。プライヴェートの印象とステージでの歌唱姿とのギャップや、互いの長所を程よく補完し合うシンクロ性は、姉妹ならではの魅力と特権といったところなのかもしれない。


◇◇◇

<SET LIST>
≪WAY WAVE Section #1≫
00 INTRODUCTION~Move Me(feat. Brendan Reilly)by Cerrone
01 みつばちパンティーライン (*1)
02 Looking for woman (*2)
03 Half Moon (*1)
04 SUMMER BREEZE (*3)
05 マジカル恋愛体質 (*3)
06 白と神様(with a guitar, excluding DJ)(宅録姉妹)
07 東京CITY(with a guitar, excluding DJ)(New Song)
≪Mia Nascimento Section≫
08 不透明
09 KUMO
10 ~Sing with a guitar medley~
 Miss you
 Don't deceive me
 Summer song
11 Summer Me, Winter Me
12 Shake
13 Sweet Magic
≪WAY WAVE Section #2≫
~ Talk & Airing Time~
14 Got To Be Real(Original by Cheryl Lynn)
15 Never Stop(Original by The Brand New Heavies)
16 Can't Take My Eyes Off You(Original by Frankie Valli, as well known by The Boys Town Gang sing)
17 レトロなステップのヴィーナス(New Song)(*3)
18 2番目の女 (*3)
19 WAVY GIRL (*3)
≪ENCORE≫
~Collaboration Section~
20 Forget(WAY WAVE & Mia Nascimento with DJ arinco)
21 Sumner Girl(WAY WAVE & Mia Nascimento with DJ arinco)(*1)

(*1)song from album『SHOW TIME』
(*2)song from album『SOUL PUNCH』
(*3)Songs to be included in the 3rd album


<MEMBER>
WAY WAVE are:
小池杏奈 / Anna Koike(vo,g)
小池優奈 / Yuna Koike(vo,g)

DJありんこ / DJ arinco(DJ)

Special guest:
ミア・ナシメント / Mia Nascimento(vo,g)

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【Mia Nascimentoに関する記事】
2017/11/15 MILLI MILLI BAR@代官山WEEKEND GARAGE TOKYO
2018/01/25 MILLI MILLI BAR@北参道STROBE CAFE
2018/05/30 MILLI MILLI BAR@六本木VARIT.
2018/09/05 MILLI MILLI BAR@北参道ストロボカフェ
2018/10/14 Mia Nascimento with 田辺真成香@星空カフェgift
2019/01/24 Mia Nascimento@下北沢BAR?CCO
2019/03/01 LOOKS GOOD! SOUNDS GOOD! @北参道ストロボカフェ
2021/05/08 〈LOLIPOP〉@mona records【Mia Nascimento】
2021/05/30 Mia Nascimento @渋谷La mama
2021/09/10 Mia Nascimento / ddm @mona records
2021/10/17 Mia Nascimento / WAY WAVE @GARRET udagawa(本記事)

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【「WAY WAVE」に関する記事】
2020/01/19 HALLCA,WAY WAVE @渋谷 RUIDO K2
2020/12/13 HALLCA,WAY WAVE @渋谷 RUIDO K2
2021/04/09 天野なつ ✕ WAY WAVE @下北沢CLUB251
2021/10/17 Mia Nascimento / WAY WAVE @GARRET udagawa(本記事)

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