2025/3/25
・モリエールの劇団への書き下ろしだったはずの戯曲が、ほぼ同時期に別の劇団でも上演されることになり、作家とモリエールや劇団員が対立する話。
・モリエールのことは「フランスの喜劇作家」というくらいでほとんど知らない。演劇では見たことないし、戯曲も『守銭奴』を読んだだけ。特に印象は残っていない。
・作中でもツッコまれていたけど、日本で外国の古典と言えばシェイクスピア一強。個人的にはイプセンくらい。
・モリエールの死後、その問題を起こした作家や近い人間の証言を聞いていく形式が採られている。
・設定を日本に置き換えているわけではないものの、いきなり盆踊りが始まったり、登場人物がおそろいの劇団Tシャツを着ていたり、上演後の様子もちょっと経験した人ならわかる雰囲気。タイトル通りダジャレもある。
・そんな不思議なバランスで成立させている。
・高尚さと対極にある感じはモリエール的と言えるかも。
・最初の30分くらいはそんな作中の約束事を見せつつ、劇団や人間関係の説明。ちょっと長く感じる。
・契約と仁義、劇団内恋愛、退団と移籍、創作への覚悟と現実との摺り合わせ、演劇を作り続ける中で直面する濃ゆい問題が表面化していくにつれ、尻上がりにおもしろくなっていく。
・作品のためなら人の道にそれたことでもするという信念に、常態化したセクハラやパワハラは含まれるのか。
・今なら完全にNGだけど、17世紀のフランスの話なので、ほぼ押し切られてしまっている。
・人の道を外れても表現者としては上みたいなセリフあったけど、現実には人の道を外れたうえに、表現者としても負けということも多いような気がする。
・現実にあった芸名改名問題までシレっと入っている。
・どっちもどっちみたいな無責任な相対主義みたいな見せ方だったらイヤだけど、人間は常に多面的で、決して悪い部分だけでは成立しないというまとめ方。
・語り手が過去を振り返る形式だからこその終盤の展開も見ごたえがあるし、そこからさらに非常に笑いの内閣らしい一捻り入っていることが本作を特別なものにしている。
・実際、唐突には違いないけど、とても馴染んでいた。
・モリエールを演じる髭だるマンさんと作演の高間響さんの関係性だからこそできる見せ方なんだと思う。
《詳細(観劇三昧HP)》
■公演時期 2018/11/02
■キャスト
髭だるマン
高瀬川すてら
アパ太郎
熊谷みずほ
しらとりまな(てまり)
上原日呂(月曜劇団)
土肥希理子
由良真介
BANRI(Sword Works)
岡本昇也
山下ダニエル弘之
亮介(株式会社イリアモデルエージェンシー)
澤田誠
■スタッフ
作・演出:高間響
助演出:河井朗(ルサンチカ)
照明:真田貴吉
音響:島崎健史(ドキドキぼーいず)
舞台美術:竹内良亮
舞台美術助手:岩崎靖史
小道具:小原藍(睡眠時間)
舞台監督:稲荷(十中連合)
制作:合同会社Sword Works
宣伝美術・スチール:脇田友
映像撮影:竹崎博人(Flat Box)
サポートスタッフ:諸江翔太朗(ARCHIVES PAY)
義村夏樹(劇団抜きにくい釘)
企画・製作・主催:笑の内閣・京都芸術センター(京都公演)
助成:平成30年度文化庁便化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)(京都公演)・芸術文化振興基金助成事業(東京公演)
提携:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場(東京公演)
後援:アンティチュ・フランセ関西(京都公演)
■あらすじ
1665年12月15日
モリエール率いる劇団は、かねてから目をかけていた若手劇作家ジャン・ラシーヌの悲劇作品である『アレキサンダー大王』の5回目のステージの上演を終えていた。4回目の公演までは大入りしていたにも関わらず、この日は不入り。不思議に思っていた一同に、ライバル劇団であるブルゴーニュ座が18日から同じ作品を上演するという衝撃的な情報が入る。ラシーヌは、喜劇は得意だが悲劇が苦手なモリエール劇団の演技に納得出来ず、悲劇が得意なブルゴーニュ座に作品を持ち込んでいたのだ。上演期間中にライバル劇団に持ち込み、経営に打撃を与えるなど、信義に悖るし契約違反。それどころかラシーヌは、モリエール劇団で唯一気に入った看板女優マルキーズ・デュパルクの引き抜きまで画策していた。育てた恩を仇で返したラシーヌに落とし前をつけさせるために呼び出すモリエール。2人の長い夜がはじまる。