みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1266「手玉に取る」

2022-06-25 17:34:41 | ブログ短編

 彼女に初めて会ったとき、僕(ぼく)は不覚(ふかく)にも恋(こい)に落(お)ちた。彼女から目が離(はな)せなくなってしまったのだ。これが、一目惚(ひとめぼ)れってヤツなのか…。僕は、次に彼女に会ったとき…、思わず告白(こくはく)をしてしまった。まったく何を考えていたのか、我(われ)ながら呆(あき)れるばかりだ。
 でも、どういう訳(わけ)か、彼女は僕のことを受け入れてくれた。彼女も、僕のこと気になっていたようだ。まさか、こんなことになるなんて思いもしなかった。それから、僕たちは付き合い始めた。
 僕は、毎日が夢見心地(ゆめみごこち)だった。彼女と何度(なんど)もデートを重(かさ)ねて…。そして、どんどん彼女との距離(きょり)が縮(ちぢ)まっていく。しかし――どうしてか、親(した)しくなっていくほどに、僕はどこか違和感(いわかん)を感じていた。それが何なのか、上手(うま)く説明(せつめい)することができなかった。
 僕がそれに気づいたとき…。いつの間(ま)にか、僕は彼女の恋人(こいびと)ではなく、召使(めしつか)いみたいになっていた。僕は、彼女に確(たし)かめた。「僕たち、付き合ってるんだよね」って…。
 すると彼女は、「もちろんよ」と返事(へんじ)を返してくれた。
「僕は、君のこと愛(あい)してる。君も、僕のこと、愛してくれてるよね?」
 彼女はにっこり微笑(ほほえ)んで、「ね~ぇ、あたしのお願(ねが)い、きいてくれる?」
 彼女は僕の質問(しつもん)をはぐらかしてくる。僕は、仕方(しかた)なくうなずいて、
「も、もちろん。えっ、なに? 僕にできることなら、何でも言ってよ」
 彼女は僕をじっと見つめて…。もう、僕には彼女に逆(さか)らうことなどできなくなっていた。
<つぶやき>惚(ほ)れた弱(よわ)みってやつですか? 彼は初めて会ったときから、すでに手玉(てだま)に…。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。


コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 1265「しずく168~新... | トップ | 1267「知らない未来」 »

コメントを投稿

ブログ短編」カテゴリの最新記事