埼玉県本庄市児玉町秋山・十二天山の十二天
秩父の山脈は本庄市の西の児玉町あたりから始まります。十二天はその秋山集落の山中に建つ神社です。
秋山集落から林道に入り、馬頭観音が鎮座する瓦屋根の木祠が建っているところがかつての登山口で、石燈籠に「従是千百米」銘がありました。
今の登山口の十二天池で、社務所・十二天会館が建っています。林道はさらに奥にのびて十二天神社の下まで入ります。
ところで十二天は仏教の守護神、とくに密教の守護として行や儀式が行われた道場に絵図として用いられたようで、木彫としても少なく、石仏となるとほとんどありません。一般には災厄から守護とされたようです。山ではこれまで奥多摩の三ノ木戸山と西上州の馬居沢秋葉山で十二天に出会っています。奥多摩の三ノ木戸山の十二天尾根には「十二天山神」銘の丸石があり、宮内敏雄氏の『奥多摩』(注)に「十二天は天神七代・地神五代を祀った宮」とあります。この神名は明治の神仏分離で仏名から変えた可能性もありそうです。西上州では十二天の各天部の銘が刻されていましたから、こちらは間違いなく仏教の十二天です。それにしても里山に祀られた珍しい神仏の背景には、近世初頭に活躍した修験者たちの姿が見え隠れしますが、十二天もその一つでしょう。
秋山の十二天も災厄守護の信仰で霊験があったのでしょう、山頂の十二天社に続く石段の両脇に祈願成就を報告する石碑がいくつも立っていました。
(注)宮内敏雄著『奥多摩』1944年、文松堂書店
(地図は国土地理院ホームページより)