ポポロ通信舎

(旧・ポポロの広場)姿勢は低く、理想は高く。真理は常に少数から・・

内向の世代作家、黒井千次

2022年10月14日 | 研究・書籍
むかし前橋市内にあった名曲の喫茶店「田園」・・♪

「一緒に会社をさぼった技術屋の仲間の中に、クラシック音楽のマニアがいた。流れてくる曲を聞きながら、シェーンベルクの『浄夜』だ、と曲名を教えてくれたことがいまだに鮮明に記憶に残っている。前橋に行くとしたら、街の中をかなりの水量と速度で走り抜ける広瀬川を見て『田園』に寄りたい、と思った。あの頃から半世紀以上も経っているのだから『田園』はもう残っていまい、と覚悟していた」と、黒井千次『漂う』の一節「前橋」から。

私も生まれ故郷の前橋には、さまざまな思い出と感情があります。なんの変哲もないような地方都市ではありますが、ゆったりした中にも少なからずの革新性と進取の気風を感じさせてくれる街です。

今では音楽喫茶の「田園」は姿を消しましたが、川沿を歩くと萩原朔太郎の記念館(前橋文学館)が建っています。

小説家、黒井千次は、「20代の数年を群馬県で過ごした。大学を卒業して就職したのが1955年。群馬県伊勢崎の工場に配属になり、太田の社員寮にはいって電車通勤することに決まった」(同書「前橋」)


黒井千次は東京生まれ。東京大学経済学部をを卒業し富士重工業で会社員生活を送った。1958年に『青い工場』を発表し当時、労働者作家として有望視される。だが1968年には退職されたようだ。上司から社業に専念できないものを雇い続けるつもりはない、といわれたとか。

ポポロ(人びと)の内面を精緻に描写する「内向の世代」の作家といわれる。あまりなじみのない作家でしたが、群馬の富士重工社員だったと聞き、にわかに親近感を覚えました。かなりの著書があります。アラカルト的に読んでいきたいと思います。




 


顔写真はウィキペディアから
動画は『浄められた夜』(淨夜)


Schoenberg "Verklärte Nacht" Karajan London Live 1988 シェーンベルク「浄められた夜」 カラヤン ロンドンライブ
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