今年もウクライナ戦争とガザ紛争は続くでしょう。砲弾とミサイルが飛び交い空爆が止まないでしょう。世界の危機意識は両戦争に引きつけられて、その他の紛争、インド洋での海賊行為などは見過ごされるかもしれません。
しかしながら、アラビア半島に面するインド洋において繰り返されるイエメンの反政府勢力のフーシ派武装勢力が行う海賊行為は、二つの熱い戦争にも劣らず重大な影響を与える段階に至っています。
従来のフーシ派武装勢力の海賊行為は小舟で防護体制の手薄なタンカーなどを襲い、身代金を強請るレベルのものでしたが、最近のフーシ派海賊は、対艦ミサイルで脅迫し、ヘリコプターで空から急襲する武装ゲリラになりました。
スエズ運河を経由する船舶の多くが標的になるので、アジア欧州航路の船舶の多くは、スエズ運河を回避して南アフリカ経由に切り替えつつあるとのことです。そのため航路の延長で増加する時間と経費の増加は30%を越えると言います。
この国際貿易に与える重大な悪影響を憂えた米国と英国は、フーシ派のテロ行為は単なる海賊行為ではなく、疑似戦争行為に相当するとしてフーシ派のイエメン基地を空爆しています。その軍事作戦をオランダ、オーストラリア、カナダが支援しました。更に関係10ヶ国は共同声明で米英軍の行動を「航行の自由や不当な攻撃から船員の生命を守るという共通の決意を示した」と評価しましたが、その声明にドイツ、韓国などが加わっていますが、日本の名前はありませんでした。
イエメンの反政府勢力のフーシ派は、ガザで戦うハマスを応援するため海賊行為だと言っていますが、実はイランからの軍事支援を受けた、イランの中東政策の一環なのです。
ご存じのようにイランは、レバノンでのヒズボラ、ガザでのハマスのゲリラ組織に武器や資金を供与していますが、イエメンでのフーシ派にも軍事援助を行い、代理戦争を試みているのです。従って米英軍のフーシ派基地攻撃はイランのゲリラ支援行動への警告でもあります。
イエメンのフーシ派の海賊行為を、日本が遠い中東での事件と軽く見るのは過ちです。台湾有事にはシナ海のシーレーンを中国の対艦ミサイル攻撃に曝されることを想定すれば、日本がイランに配慮して10ヶ国共同声明には参加しなかったのは間違いであり、林官房長官談話で批判することにとどめているのは、危機意識の欠如と言えます。
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