★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇パブロ・カザルス指揮マールボロ音楽祭管弦楽団のモーツァルト:交響曲第38番「プラーハ」/ 交響曲第39番

2022-01-10 09:45:25 | 交響曲(モーツァルト)


モーツァルト:交響曲第38番「プラーハ」
       交響曲第39番

指揮:パブロ・カザルス

管弦楽:マールボロ音楽祭管弦楽団

録音:1968年7月7日&14日(第38番)/1968年7月12日(第39番)、米国マールボロ(ライヴ録音)

LP:CBS/SONY 13AC 947

 このLPレコードは、マールボロ音楽祭(米国バーモント州)における “チェロの神様” パブロ・カザルス(1876年―1973年)が指揮したライヴ録音盤である。カザルスは、スペインのカタルーニャ地方の出身で、チェロの近代的奏法を確立したことで知られる。その演奏内容は、深い精神性に根差したもので、20世紀最大のチェリストとも言われる。特に、「バッハの無伴奏チェロ組曲」(全6曲)の価値を再発見し、広く知らしめたことで知られる。また、カザルスは平和活動家としても名高く、あらゆる機会を捉え、音楽を通じて世界平和を訴え続けた。最晩年の1971年10月24日には、ニューヨーク国連本部においてチェロの演奏会を行い、「私の生まれ故郷カタロニアの鳥は、ピース、ピース(平和)と鳴くのです」と語り、「鳥の歌」を演奏したことが、当時大々的に報道され、日本でも大きな話題を呼んだ。カザルスはその2年後、96年の生涯を終えている。指揮はいつ頃から開始したかというと、1908年(32歳)からのようだ。マールボロ音楽祭は、1951年にピアノの巨匠ルドルフ・ゼルキンらによって始められたが、このLPレコードでのカザルスの指揮は、これまでのモーツァルトの音楽の概念を一掃してしまう程、実に堂々とした構成美で貫かれている。流麗なモーツァルトでなく、男性的な力強いモーツァルト像を描き出す。第38番「プラーハ」は、ゆっくりとしたテンポと軽快なテンポを相互にからみつかせて、実に爽やかなモーツァルト像を描く。一方、第39番は、どの指揮者よりもスケールが大きく、雄大なモーツァルトの音楽を構築しており、モーツァルトがこの曲に投入したエネルギーの全てを、カザルスは我々の前に余す所なく再現してくれている。私は、こんなに堂々とした第39番をこれまで聴いたことがない。いずれの録音も演奏中のカザルスの肉声が入っていることでも分る通り、カザルスはその音楽性をこの演奏に全て投入したことが歴然と分る演奏内容だ。他に較べるものがないくらい風格のある演奏であり、同時に記念碑的な貴重な録音でもある。このLPレコードのライナーノートに諸井 誠(1930年―2013年)は、「カザルスはモーツアルトのシンフォニーを、遠慮会釈なくドラマチックに表現してみせる。時にはグロテスクなほどに・・・。そこには、これまで私の知らなかったモーツァルト像がある。 ・・・それにもかかわらず、超絶の人、パブロカザルスは、依然として私を敬虔な気持ちにさせるのである」と書いている。(LPC)


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