もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

中国発の気球撃墜に思う

2023年02月06日 | 中国

 米本土上空を飛行(中国は浮流と強弁)していた中国発の気球を米軍が破壊した。

 当該気球について中国は、民間企業の気象観測気球がコントロールを失って米本土に達したものと説明しているが、誰も・どの国も信じていないようである。
 コントロールを失った割には、アメリカのICBN発射基地周辺を正確に飛行していることから、偵察・情報収集気球であることは疑いようもない。中国発の気球はこれまでアジア・中南米、欧州で確認されており、日本でも正体不明の気球と話題になった。
 この事態に対して《ブリンケン国務長官の訪中前になぜ?》との意見を聞くが、素人観では2つの点で「ブリンケン氏の訪中前であるからこそ飛ばしたのでは?」と疑問がある。
 1は、習主席若しくは習政権中枢が「ブリンケン氏の訪中を白紙に戻す」ためではなかろうかということである。ブリンケン氏の訪中では、ウクライナ事変における中国の対露・イラン支援が主要議題に含まれていたために、最近明らかとなった中国製デュアルユース部品がミサイルや無人機に数多く使用されていた事実を面詰された場合の「手土産代わりの何か」を持たせることを嫌った結果と考えられる。
 2は、習政権の意に反して米国譲歩を嫌った人民解放軍が独自に飛ばした可能性である。全体主義国にあっては、強固な権力を得るためには党と党に並立する軍の両方を掌握する必要があり、金一家が絶対的である北朝鮮にあっても、金正恩氏が軍のトップを兼ねるまでに少なからぬ時日を必要とした。習王朝にあっては、2013年3月の第12期全人代で習近平氏が「国家主席・国家中央軍事委員会主席」に選出され、党・国家・軍の三権を同時に掌握したが、10年が経過した今では、習指導部に懐疑的は軍指導者が生まれ育った可能性も捨てきれない。この軍を政治がコントロールできないケースが最も危険で、指導者の意に反して軍が暴走する可能性があり、かっては政府の事変不拡大方針に反して統帥権を理由に部隊を増派して事変を拡大した満州事変の例もある。

 今回の中国気球はバス3台分ほどの大きさで制御機能も持っていることから、かって日本軍が飛ばした風船爆弾とは雲泥の差があるように思えるが、探知困難で安価な無人攻撃であることは似通っている。9000発以上飛ばした日本軍の風船爆弾は約1000個がアメリカ本土に着弾し、6人死亡と随所の火災を起こしたとされているが、コントロール可能な気球で生物兵器を充填した気球であれば、その被害は想像したくない程のものになるだろう。
 中国外務省報道官は「中国は完成された国であり、如何なる国の領海・領海も侵さない。民間資産の破壊に強烈に抗議する」としているが、誰も信じないだろう。


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