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アルファロメオと小倉唯

日本再生のカギは、日本にこだわらないこと!

車のことでいつもお世話になっている、マエストロS君から連絡が入って。

 

私が約30年にわたって乗り続けて、今年の8月に経済的な理由から手放した愛車…

 

「メメ」ことアルファロメオ155ツインスパーク2.0 8バルブ(初期型)が、新しいオーナーの元に引き取られたと。

 

 

新オーナーは、東京都の某区に住む、そこそこ若い男性だとのことですが…

 

旧車を含め数台のアルファロメオを所有する、熱心な「アルフィスタ」だそうです。

 

それなら、間違いなくメメの希少性をわかって購入してくれたのでしょうから、大切にしてくれるのではないかと。

 

整備もS君に依頼してくれそうだということなので、彼の工場で、もしかするとまた偶然の再会があるかも。

 

たぶんメメの寿命も、私のところにいるよりも伸びることでしょう。

 

これからe-carの時代になっても、40年、50年と幸せな「車生」を送ってほしいと思います。

 

 

そして、帰省していた息子はアパートに帰って行きました。

 

今回は私が、前にブログに書いたイタリア人の親友と会食する予定が入っていたので、送って行きませんでした。

 

でも、久しぶりに一緒に風呂に入って背中を流し合う、ということをしました。

 

そして彼の研究の近況から、製薬業界の話題になって、さらに科学技術全般の話をしました。

 

日本の製薬会社、塩野義が開発して緊急承認されたばかりの、新型コロナ治療薬「ゾコーバ」の話も出ました。

 

日本の会社が出した初の「コロナ関連薬」となったゾコーバ。

 

でも息子の個人的な意見では、ちょっと、というよりかなり見切り発車的な形で出た薬だそうで…

 

「現場の研究開発者たちとしてはもっとじっくりやって、完全な形で出したかったんじゃないかな」と。

 

でも「日本製のコロナ治療薬を早く!」という社会的、政治的な要請、そのプレッシャーが強く。

 

それ以上にこれほどの時間と開発資金をかけながら、そろそろ何かしら「成果」を出さないと…

 

何より塩野義の株主たちが承知しない、という事情があったため…

 

会社の決算前になんとか形になった薬を承認にこぎつけて、世に出さないといけなかったのではないかと。

 

そうでないと、大げさでなく会社がつぶれてしまうかもしれない、ぐらいの危機的な状況だったらしいです。

 

とにかく全社の研究員や開発費、様々なリソースの7割以上を「ゾコーバ」だけに割いてやってきたので…

 

他の事業が圧迫されていて、業績自体もかなり悪化していると。

 

コロナ治療薬やワクチンの開発というのは、それぐらいリスクのある事業で…

 

だから塩野義以外の日本の製薬会社は、みんな恐れをなして開発競争から下りてしまったわけで。

 

それでもただ一社、挑戦を続けた塩野義の「勇気」を高く評価したいと、息子は言っていました。

 

ただ、薬としての完成度は今ひとつで、使い勝手も悪いので、他の治療薬との競争力に関しては心配だと。

 

今回の商品は「株価対策、株主対策」のために、とりあえず会社の決算期の前に間に合わせて出したもので…

 

研究開発現場では、たとえば「ゾコーバS」とか「ゾコーバR」みたいな名前のものを…

 

数年後に「改良版」「完全版」として出すための努力を続けているのでは、と想像しているとのこと。

 

でも、そのころにもし、新型コロナ禍が完全に終息してしまっていたら、その薬はもう売れないでしょうね。

 

今般のコロナ治療薬とコロナワクチンの開発競争では、日本企業が明らかに海外勢におくれをとって…

 

日本の創薬科学の現場の、開発力の弱さが、あらわになってしまいました。

 

ひとつは、日本の製薬会社の企業規模が小さく…

 

緊急性が高くて多くの人員を要し、かつリスクの大きい事業を進めるのに耐えられる、体力がないということ。

 

もうひとつは、研究者が「日本人に偏っている」ことのようです。

 

世界の製薬会社ベスト10に入っているのは、日本企業では武田薬品工業だけですが、そのタケダでさえ…

 

日本人研究者の割合が高すぎると。

 

他の国の製薬会社の研究開発部門は、大手でも小さなベンチャーでも本当の意味での「多国籍チーム」で…

 

たとえばスイスの会社でも、スイス人の研究者はわずかで、あらゆる国から優秀な人が集っている。

 

 

それに対して日本企業は「純血主義」とまではいかなくても、日本人研究開発者がほとんど。

 

野球に例えれば、外国企業は「メジャーリーグ」みたいなもの。メジャーリーグには…

 

キューバ、ドミニカ、プエルトリコ、カナダ、などのほか、日本人の大谷翔平やダルビッシュや前田健太や…

 

以前で言えばイチローや松井秀喜など、選りすぐりの日本人選手も参加していたわけです。

 

それに対して日本の企業は、野球で言えば、外国人選手の登録に関して「2人枠」があった…

 

かなり昔の、日本のプロ野球球団みたいなもの。

 

そのころの日本の野球チームが、メジャーリーグのチームに歯が立たなかったのは、当然のことです。

 

日本の製薬会社が海外勢に歯が立たないのも、それと同じだと息子は言います。

 

ではなぜ、日本の企業には、世界中から優秀な人材が集まって来ないのか。

 

その理由としてうちの息子は、2つ仮説を挙げていました。

 

1.日本とそれ以外の主要国の、賃金格差が大きい。

 

先進国、新興国を問わず、世界の主要国でこの30年、労働者の賃金が目立って上がっていないのは、日本だけ。

 

その影響で、たとえば製薬会社に、博士号を持った研究職の新入社員が入った場合の初任給は…

 

日本では1千万円に届かない。

 

一方海外企業では、博士号取得者の初任給は日本円で言えば「最低2千万円から、それ以上」というのが常識。

 

これでは、薄給しか出さない(出せない?)日本企業を、わざわざ選んで来てくれる人はなかなかいない。

 

2.年度の始まりが4月であることと新卒一括採用

 

日本では、企業の会計年度も、また教育機関の年度変わりも、3月終わり、4月始め。

 

しかし海外ではそれが、9月、10月になる。

 

(企業は年末に会計を締めたりしますが、それでも日本みたいな3月というのはない)

 

この「時期のズレ」がいろいろ問題になる。

 

海外の教育機関を修了して職を探す人、または年度変わりを区切りとして転職する人…

 

いずれも、行動を起こすのは秋から冬にかけて。

 

ところが、日本企業に入ろうと打診すると「うちの年度始めは4月なので、できればそれまで待ってほしい」

 

と言われてしまう。優秀な人で待ってくれる人は稀なので、結局その人は他国の企業に取られてしまう。

 

もっと大きな問題は、製薬会社に限らず、日本企業の「新卒一括採用」だと息子は言います。

 

学校を終えた学生が、4月に「ピカピカの新入社員」として、大量に、一斉に入ってくる日本の企業。

 

 

でも、外国にはそうした慣習がない。

 

職を探す若者は、日本で言う「ジョブ採用」という形で、自分の希望するポストが空いた企業を探し…

 

人を募集している企業を個々に見つけて、応募し、入社する。入社の時期も不定。

 

一方で、実際に働いてみたら有能でない人材も含めて、大量一括採用している日本企業。

 

その人材はほぼ全てが日本人です。しかも一度社員として採用してしまうと、解雇はしにくい。

 

そういう状況では、空いたところに、途中入社の外国人が入るというのは、非常に難しい。

 

結果、日本企業はほとんど全部が日本人、もしくは日本の学校を出た人だけの「純血集団」になる。

 

これでは、世界から優秀な人材を集めて「多国籍チーム」を作るというのは不可能に近い。

 

4月に新入社員を一括大量採用するという習慣がある限り、日本企業が多国籍チームを作るのは無理。

 

結果、日本の企業は「メジャーリーグ」にはなれない、ということです。

 

なるほど、と思いました。

 

そして以下は、私の私見です。

 

 

 

もちろん、純血集団にも、いいところはあるでしょう。

 

でも科学技術の進歩や、全く新しい商品やサービスを創造するには「発想の多様性」が物凄い強みになります。

 

イノベーションは、異なる発想のぶつかり合いと、その結果起きる融合から生まれることが多いからです。

 

それには単一の文化的な背景と、単一の教育的経験を持った人だけの集団より…

 

そこの部分で、バリエーション豊かなチームで仕事をした方が、絶対に有利。

 

 

「本当に新しいもの」「最先端のもの」を創造するには、異文化融合チームが必要なんです。

 

実際、自然科学の新しい発見や、最先端技術のイノベーションは、多くの国の大学や企業の…

 

合同研究チームによってなされることがほとんど、というより、最近は「それが全部」と言っていいくらいです。

 

ノーベル賞は、ほとんどが数十年前の古い業績に贈られるものなので、今の状況を十分反映していませんが…

 

それでもなお、科学技術関係のノーベル賞は、やはり別の国の別の研究者やチームとの共同研究であって…

 

共同研究者の○○さんと✕✕さんが一緒に受賞、という場合が多いのは、ちゃんと見ればわかります。

 

サイエンスとテクノロジーの世界では、もう既に、国籍は意味をなさなくなっている。

 

そして、天才一人が孤独にやる研究ではなく、チームで行う研究がほぼ全部になっています。

 

そこで問題になるのは、日本は島国であるせいか、自分たちの特殊なやり方、習慣にこだわり過ぎるところです。

 

それに適応できない人間や、外国人は「合わせられないなら出て行け」とチームから排除する。

 

同じ意見や行動を共有し、異論とのぶつかり合いを嫌う「同調圧力」も強い。

 

そういう日本人の特性が、実は、日本の企業や集団が衰退する、一番の原因なのではないかと思います。

 

異論を嫌い、同調を強要するような環境から、イノベーションなんて生まれないですから。

 

そして、突出した才能は「出る杭」として打たれて、潰されるか、日本から逃げ出すかのどちらかになる。

 

この国民的気質が改まらないと、これから先、世界の中での日本の地位は下落するばかりでしょう。

 

 

もうひとつ、最近の日本の傾向として…

 

必要ないところ、あってはいけないところにまで、ナショナリズムを持ち込む傾向があるのが駄目だと思います。

 

たとえば、科学技術に関する分野。

 

日本の大阪大学が、世界の何十もの大学や研究機関と一緒に参加している、ある国際研究プロジェクトがあり。

 

そこが、常温核融合に関する新しいイノベーションの「とっかかりをつかんだ」…かもしれない……

 

というニュースが流れたとき。

 

日本のネットメディアは「阪大が常温核融合について新しい方法を開発!」と報じていました。

 

少し前までは「阪大も参加している国際研究チーム」と、正確に書いていたと思うんですけど。

 

「阪大が発見!」と、わざと不正確に書いた方が、PV=ページビューを稼げて、お金になるからなんでしょう。

 

でも、日本の大学が発見!日本の研究者が開発!という書き方をしないと、一般の人が喜ばない。

 

海外の多くの研究者と一緒に、共同チームでやりました、ではウケないんですね。

 

それから、少し前、夕方の空を国際宇宙ステーションが横切り、それが地上から肉眼で見えたことがありました。

 

そのときも「国際宇宙ステーションが夜空に見える」と言えばいいところを、メディアは…

 

日本の宇宙ステーション「きぼう」が見える、と報じていました。

 

「きぼう」は、他の多くの国のユニットと連結合体して「国際宇宙ステーション」を形成する小さな一部分で…

 

肉眼で見えるのは、その合体したステーション全体が、とても巨大だからなんです。

 

それを、あえて「きぼう」が見える、と報じていたのには、違和感を感じました。

 

その背景には、他国との比較において「日本人は凄い!」「日本は特別に凄い!」というところに…

 

一般国民がこだわって、その話題を強く欲しているということがあると思います。

 

 

もちろん、ナショナリズムを全部否定するつもりはありません。

 

でも、新しいことを創造する場面、科学と学問の分野、ビジネスの世界に、ナショナリズムを過度に持ち込むと…

 

私たちは、どんどん不利な状況に陥り、自分の首を自分で締めるようなことになりますよ。

 

そしてまた、その「日本だけが凄い」にこだわるメンタリティは、外国人との共同作業の邪魔になると思います。

 

息子が言うように…

 

1. 賃金を他の先進国並みに上げること。

 

2. 4月入社の新卒一括採用をやめること。

 

(2番目をやったら失業率がドッカンと上がりますから、国民、特に左系の人は大反対でしょうけど)

 

これらも確かに、日本の企業に力をつけさせるためには必要なのでしょう。でも…

 

それ以前に、同調圧力と島国根性、排外主義と不必要なナショナリズム、これらを克服しないと、日本人は「長い長い下り坂」から脱することはできない。

 

どれも、ものすごーーーく、難しいと思います。

 

目先のサッカーの勝敗とかに、一喜一憂するのも結構ですけれど、それが終わった後に続く、現実生活。

 

それを豊かなものにしたければ、というよりも、暗く憂鬱なものにしたくないのならば…

 

気持ちを切り替えて、世界の人々に近づくこと、異文化を身近に感じること。そして…

 

チームメイトとして、同国人だけでなく、外国人ともうまくやれるようになること。

異文化と共生し、違いを乗り越えて、初めて新しいものを作れると、理解すること。

こちらの方がずっと大事。

 

 

世界が今直面している、様々な、解決不可能とさえ見えるような問題。

 

それを乗り越え、次世代が生存可能な社会を残すために、最終的には国家的エゴを乗り越えずには済まされない。

 

そのことを忘れないでいたいものです。


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コメント一覧

angeloprotettoretoru
@じょぜ☆さま。
コメントありがとうございます☺️
島国根性に閉じこもろうとしたり、国籍で垣根を作って閉じこもろうとしたり、現代人はタコツボの中に🐙入ろうとしがちです。
宗教とか政党とか国家とか、あるいはメディアとか、今までみんなが信じたり寄りかかったり帰属したりして、心の安心を得てきたものが、どうも怪しくてもろくて信用出来ないものだということが、なんとなくあらわになってきた時代。不安だからこそ、自分だけの神話を見つけて、みんなそこに閉じこもりたがるんだと思うのです。
でもそれでは誰も幸せになれない。それどころか神話の作者にいいようにぼったくられるだけです。しまいにはお金でなく命までぼったくられます。
みんなが一緒に幸せに近づくためには、タコツボから出るところから始めないとダメ🙅ということをブログでも言いたいのですが、力足らず上手くいかないです。
じょぜ☆
toruさん♪

学生時代のアメリカ人講師が(当時は80's)、アメリカで吹き荒れるナショナリズムにうんざりして、日本に来た。
と言っていたのを思い出しました。

国が弱ると偏狭なナショナリズムが蔓延るのは、世界共通なのですね。

何だか、元々ある、島国根性が最近拍車かかってる気がしますが。

国って、いい所もあればダメなところもありますよね。
改善した方が良いところは、どんどん変えていけばよいですよね。

息子さんの指摘……ためになりました。
コロナにかからないようにしないと。

サッカー、、、、日本が強くなったのは、嬉しいです。 でも不思議なのは、大袈裟な精神論の賛美かな〜〜〜〜

あと、ハワイの丸亀製麺うどん1杯1200円解か。
これでは海外旅行やら、ましてや留学など庶民には高嶺の花になってしまいますね。

支離滅裂なコメになりましたが、もう少しインクルーシブな社会になってもよいのかなと思いました。
angeloprotettoretoru
@nerotch9055 さま。
こんばんは!🌃
メメの新しいオーナーがどんな人か聞いて、なんとなく安心しました。
またいつか会える希望もありますしね!
国粋主義や排外主義、そして不都合なガラパゴス現象に開き直る態度は、愛国者を自認するような人にありがちなことです。でも実は、そういう人がこの国を衰退や破滅に導いているのだという…。愚かなことです。
島国根性を克服するのはかなり難しいことですし、ここまで続いた習慣や仕組みを変えるのは、すごく困難なことだと思います。
でもそれをやらないと、近未来に大変なことになるのが、確実なんです。
一番問題なのは、その危機感をリアルに感じて、行動してくれる人が少なすぎることです。どうすればわかってもらえるのか、途方に暮れることが多いです😢
nerotch9055
こんばんは、バロリスタさん!
メメさん、素晴らしいオーナーさんのところに行かれたようで、良かったですね!!
マエストロさんのところで再開できることを、祈っております。
さて、後半の息子さんとのお話は、まさにその通りだと思います。
今こそ日本は、多くの外国から違う文化を学び、吸収して行くべきでしょう!
日本が好き、もしくは日本に興味を持ってくれる海外の方も多いのに、観光だけで終わってしまうのは
もったいない!!
①、②ともに、改革していかないと、長い下り坂どころか底なし沼に落ちてしまわないか、心配です。
「日本は、スゴイ国なんだ!」と言えたのは、もう昔の話だと思うのです。
(・・;)
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