テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

ゴスフォード・パーク

2022-10-09 | サスペンス・ミステリー
(2001/ロバート・アルトマン監督・共同製作/マギー・スミス、マイケル・ガンボン、クリスティン・スコット・トーマス、ボブ・バラバン、ライアン・フィリップ、ケリー・マクドナルド、クライヴ・オーウェン、ヘレン・ミレン、アイリーン・アトキンス、エミリー・ワトソン、アラン・ベイツ/137分)


 多作なアルトマンだが僕はそれ程観ていない。初期に「M★A★S★H マッシュ (1970)」とか「ギャンブラー (1971)」、「ロング・グッドバイ (1973)」を観たくらいで、評判になった群像劇「ナッシュビル (1975)」も見逃していて、以来縁遠くなっていた。群像劇がお得意といわれているが、改めて考えると「M★A★S★H マッシュ」もそうだったな。そして今作「ゴスフォード・パーク」もそうであります。
 まるでアガサ・クリスティの「オリエント急行殺人事件」のような、誰もが犯人になりうるような登場人物が沢山でてくるミステリーで、ちょっと最初はミステリーっぽくない感じで始まるんだけど、登場する人物が誰も皆誰かに悪意を持った人間ばかりで、これはなんか起こるなと段々思えてきて・・・てな展開ですよ。
 終盤には殺人事件が起きて警察が出てくるんだけど、咥えパイプの主任刑事がジャック・タチみたいで、一見切れそうなんだけど実は無能じゃないかと思えるのはアルトマン流のコメディセンスでしょうかね。

*

 1932年の11月、イギリス。
 ある雨の日、郊外に建つカントリーハウス「ゴスフォード・パーク」に親戚縁者が集まってくる。ホストはウィリアム・マッコードル卿とその妻シルヴィア。ゲストはシルヴィアの叔母トレンサム伯爵夫人にシルヴィアの二人の妹ルイーザとラヴィニアとその夫たち、ウィリアムの又従弟にあたる映画俳優ノヴェロとその友人で映画プロデューサーのワイズマンなど。そしてそれぞれには概ね従者が付いていた。表向きは男性陣の明日の野鳥のハンティング・パーティが目的だが、ホストにもゲスト側にも晩餐会でのやりとりに重きを置いている所もあった。
 ゲスト達は上階のそれぞれの客室に入るが、付き人達はハウスの使用人等と同じ階下の部屋に寝泊まりすることになる。
 上階ではお金にまつわる駆け引きで相手の腹の探り合いが始まり、下では使用人たちが忙しく働きながらも主人たちのゴシップに花を咲かせる。
 ホスト夫婦はすっかり氷のような関係だし、姪の旦那の支援が生活の糧なのにどうも打ち切られそうだという噂が気になってしようがない伯爵未亡人。シルヴィアの妹の旦那はアフリカでの事業が軌道に乗らずマッコードル卿からの投資が打ち切られそうでハラハラしている。殆どの来賓者はホストが嫌いなんだが表立っては逆らえないというジレンマを抱えているわけですな。
 そんな中、二日目の夜に事件は起きます。
 ノヴェロがピアノの弾き語りを始め、使用人たちが物陰でうっとりと聴いている時、女性の悲鳴が響き渡る。
 被害者はウィリアム。書斎の机に突っ伏した彼の胸には銀のナイフが刺さっていたのだが・・・。

*

 11月のイギリスですから寒々しい空気感があって、よそよそしい人間関係にぴったりだし、鼻持ちならない伯爵夫人もマギー・スミスにぴったしです。
 オープニングはその伯爵夫人が雨の中を車で出発する所で、彼女にはメアリーというメイドが付いているんだが、このメアリーが物語全体の狂言回しになっていきます。
 映画プロデューサーがカントリーハウスでの人々のやりとりをネタに群像ミステリーを思い付くというのも面白い発想ですね。
 メアリーにはケリー・マクドナルド、ヘレン・ミレンはメイド頭、アラン・ベイツは執事の役でした。

 お薦め度は★三つ半。
 アガサ・クリスティのミステリーのファンには半分おまけです。
 あと登場人物が多いので1回では把握しきれないです。最低2回は観る事をお勧めします。





・お薦め度【★★★★=アガサ・クリスティファンの、友達にも薦めて】テアトル十瑠

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