「マッキーのつれづれ日記」

進学教室の主宰が、豊富な経験を基に、教育や受験必勝法を伝授。また、時事問題・趣味の山登り・美術鑑賞などについて綴る。

マッキーの時事随想:JAXAH3打ち上げの話題で思ったこと

2023年02月27日 | 時事随想

 2月17日に打ち上げ直前で中止となったJAXAのH3ロケット初号機について、大きな話題となっています。それは、H3ロケットの打ち上げの本質的な成果の問題ではなく、「中止」となったのか「失敗」となったのかの言葉問題が話題の中心です。JAXAの会見で、かたくなに「失敗」を認めないJAXA担当者に対し、共同通信の記者が「わかりました。それは一般に失敗といいます。ありがとうございます」とあきれるように質問を終えたことが、SNS上で炎上したことがきっかけとなっています。

 JAXAの説明によると、第1段の主エンジンに着火後、制御装置が異常を検知し、補助ロケットの着火信号が送られなかったことにより、打ち上げが中止したそうです。異常を検知した系統は、機体の打ち上げ前に地上から自動で送られる電気信号を受けて制御装置内のスイッチがオンになると、エンジン側に電力が供給される仕組みになっていました。スイッチのオンオフの動作や、地上設備からの信号のやりとりの際に何らかの不具合があり、回路が停止した可能性が高いそうです。今回のロケット打ち上げは、機械的な制御で「中止」となったことは事実ですが、装置の不具合により打ち上げることができなかったという結果は、「失敗」と評価すべきことです。私の知人に、元JAXAの職員がいますので、今回の話題には関心があります。

 H3ロケットの開発費用は、2000億円ほどの予算が国から支給されています。しかし、「H3」は年単位の打ち上げ延期をすでに過去に2回経験していて、開発主体としては、3度目の長期延期となれば、将来のビジネス獲得に不可欠な信頼性を失いかねないと強い危機感を抱いている状況です。そうした理由から、JAXAとしては、制御装置が健全に機能して打ち上げが中止となったという言い方しかできなかったと私は考えています。JAXAは今後も詳細な原因を特定した上で必要な対策を行い、打ち上げ予備期間に設定されている3月10日までの打ち上げを目指すということです。今回のロケット打ち上げを評価すれば、明らかに失敗です。そうした評価を、JAXAの内部でも外部でもしてほしくない状況があるでしょう。

 炎上した記者の、中止という言葉に対する疑問は当然だと私は思います。ただ、会見の最後に捨て台詞的な言い方があったのは問題でしょう。この記者の質問がSNS上で批判されているのはどうなのでしょう。ネガティブワードは不愉快であり、日本の衰退が話題となる現在、多くの方も「失敗」という言葉を使いたくないという心情があるでしょう。今回も、ホリエモンは「こんな批判だけしかできないうんこ記者に『失敗』『失敗』と言われたら萎える」 などといつもの下品な言葉で感情をぶつけています。えげつない人生を送った教養のない人物の言葉であることは確かです。

 産業技術・科学技術などを育成し、それらに基づいて国を発展・繁栄させる「技術立国」を目指す日本では、今回のロケット打ち上げ失敗だけではなく、三菱重工業が国産初のジェット旅客機の開発を断念し事業から撤退することを決めたというニュースが連続しました。しかし、そうした失敗をしっかりと受け止めて、曖昧にしないことが重要だと思っています。そうした問題の根底に、理系進学者の少なさや大学院進学者に対する低い評価や政府の取り組みなど、様々な問題があることを反省すべきです。ロケット打ち上げ中止などと、問題を曖昧にする姿勢は、今後の課題解決に障害となると私は考えています。

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